『フォーカス&コントラスト』
町村チェス 宝島社 \900+税
(2014年12月10日発売)
上京して2年目の夏。写真学校に通うハルは、近所に住む年上の友人・きょうちゃんの部屋に入り浸っていた。
ハルがカメラを向けてもいっこうにかまえない、「いつだって自然体の大人の女性」のきょうちゃんに憧れ、被写体として魅了されてゆくハル。
作品制作に燃え、彼氏もでき、夏を謳歌するハルに対し、きょうちゃんはかつてはスタイリストとして華やかな日々を送っていたが、今はハルに撮られるだけの日々を過ごしている。
「わたしもハルくらいのときが一番楽しかったなあ」とつぶやくきょうちゃんに、ハルは無邪気に「なんか見つければいいじゃん」と返す。
2人の関係が「撮る者と撮られる者」へと変わるにつれ、憧れは好奇心や優越心へと変わり、カメラはクールなきょうちゃんの孤独や絶望を、容赦なくむき出しにしてゆく。 罪悪感を抱きながらも撮ることを止められないハルを責めながら、静かに精神を病んでゆくきょうちゃんの姿が、怖くも切ない。