ある夏のある2人にぎゅっと焦点を絞り、そこに東京、10代から20代の夢と挫折、女同士の友情……といったテーマを鮮やかにうかび上がらせる精巧な手つき。
光と影のような2人の関係を示唆する、スクリーントーンを用いた画面。カメラ、サングラス、現像液に沈む印画紙、西日の差す部屋、腐った果物、植物の成長を早回しで捉えたフィルム……などのメタファーも、新人とは思えぬ上手さ!
夏の日射しのように強烈なコントラストが脳裏に焼き付いて離れない、眩しくも切ない一作。
同時収録の描きおろし短編『かぜきり団地』は、団地に住む母子家庭の少女の物語。
『フォーカス&コントラスト』同様、誰も裁かず、ことさらなメッセージを発することもなく、そこにある絶望も希望もありのままに淡々と描いてみせる。
「なんにもできやせんけれど せめて見守ってやんなさいよ……」という老婆のセリフに象徴される、その現実への厳しくもあたたかな眼差しこそ、町村チェスという作家の真骨頂なのだろう。
すでに非凡なセンスを持つ彼女が今後、どんなテーマを描いてゆくのか。
期待せずにいられない!
『フォーカス&コントラスト』著者の町村チェス先生から、コメントをいただきました!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69