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【インタビュー】かわかみじゅんこ『中学聖日記』14歳の男子中学生と女教師の“禁断の恋”…… 著者が今後描きたいのは「ガチな●●シーン」!!

2017/10/19


だれか、めんどくさい聖の友だちになってあげてください(笑)

――う~ん、たしかに。「先生に向いてない」とか「イライラする」とか言われつつも、まっすぐに「好き」を伝えてくるってかなり効くかもしれません。本作は「年の差恋愛」ものではありますが、晶と聖、それぞれの目覚めの物語にもなっていますね。

かわかみ  そうです。晶は14歳なので成長していくのが自然ですが、聖も若くて全然錬れてないですし。いろいろ掘り起こして処理しきれなくなったり。だれでも経験あると思うんですけど、そういうことを聖は「まいっか」って流せないし、まずツッコんでくれる友だちがいないんですよね。だれか友だちになってあげてください。

――かわかみ先生、聖に対しての掘り下げが厳しいなあと(笑)。そこが大人向けマンガのよさだと思いますが。それにしても晶の物言いは直球ゆえに、大人にとっては手ごわいかも。ハッとするシーンやセリフがたくさんありますが、思い入れの深い場面は?

かわかみ  自分としては……。やっぱり、「ぼく 先生の顔見ると イライラするんです」ですかね。このマンガはそこ始まりみたいなところもあるので。

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晶の「イライラ」が恋心と結びついた時、物語は加速する。

晶の「イライラ」が恋心と結びついた時、物語は加速する。

――「イライラする」は第1話から出てくる重要キーワードですよね。女の子と違って恋に憧れないからこそ、本心に率直な男子のリアルさがよく出ていると思います。10代の男の子の心理など、取材したり参考にしたりしたことはあるのでしょうか。

かわかみ  ありがとうございます。直接取材とかはセクハラっぽいんでアレですけど、担当さんに「“超”って今の子も使うんですかね?」とか訊いたりはします。あとは日本に行った時に、人の会話にものすごい聞き耳立てたり、学生の集団がいたら物陰から見つめたりします。

――晶と聖だけでなく、登場人物たちが本心に触れるような会話にドキドキします。会話の場面ではどんなことを意識していますか? キャラクターが自然に動くという感じなのでしょうか。

かわかみ  ある程度キャラが自然に動いてくれるのもありますが、すごい悪ノリして飛躍しちゃう時もあるので、そうならないように気をつけてはいます。具体的には1シーン1~2見開きで終わるように努めてます。はみ出しちゃう時も、悪ノリしちゃう時もありますが……。

――晶とるなのシーンなどはナチュラルな緊張感があってたまりませんね。るなは計算高いようでいてとても健気で、どんどん好きになっていってしまいます。

かわかみ  そう言っていただけてうれしいです! るなは最初こんなにメインに食いこんでくるキャラじゃなかったんですけどね。出番が増えたので、1巻を出してもらう際に黒目部分を描き足して、少しかわいくしました。そういえば聖に感情移入していたある編集さんが、ある回を境にるな側にまわったのが、描き手としておもしろかったです。

晶に対し、最初から“ガンガン行こうぜ”なるな。2人のやりとりは、物語が展開するごとにも注目してほしい!

晶に対し、最初から“ガンガン行こうぜ”なるな。2人のやりとりは、物語が展開するごとにも注目してほしい!


これから描いてみたいのは“ガチなラブシーン”!?

――巻が進むにつれ、晶、聖、るな、勝太郎それぞれの「好きな相手に求めるもの」の違いが見えてくるのもおもしろいです。これも作品の軸として意図されていますか?

かわかみ  そうですね。「好きっていう気持ちってなんなんだ!?」みたいのがいまだにあるので、そこはやっぱりどうしても恋愛ものを描く時の、軸の一端になるのかもしれません。

――ストーリーを描く時、だれか特定のキャラクターに感情移入していますか? それとも全体を俯瞰する感じでしょうか。

かわかみ  全体を俯瞰しつつ、それぞれに自分の感情を少しずつ投影している気がします。いろんな人がいてくれて助かります。

――ちなみにお気に入りのキャラクターは? 

かわかみ  九重です。九重あっての晶だと思っているので。私、男同士の友情に対して多大なファンタジーがあるんです。担当さんにはよく「お前はいいよ!」とか言われていますがしつこく出します。

晶とはいいバディ感(?)のある九重少年。ちゃかしたり本気で怒ったり……いいやつ!

晶とはいいバディ感(?)のある九重少年。ちゃかしたり本気で怒ったり……いいやつ!

――わーっ、九重くん大好きです! 人ってどんなに強固でも、つきあう人しだいで変わると思うので……。九重くんには晶のそばにいてほしいですね。ちなみに、今後描いてみたいエピソードなどはありますか?

かわかみ  聖が中学校を辞めて、いっとき休んでいたあいだのお話と、あと久しぶりにガチなラブシーンが描きたいです。目指せ『BE FREE![注1]』です!

――それはめっちゃ楽しみ! 本作は読み切り作品をきっかけに、連載作としてスタートしたそうですが、当初から結末は決めているのでしょうか。 

かわかみ  どう見てもあれで終わらせる気がない感じの第一話でしたよね。終わりってなったらそれはそれでって感じだったのですが、続けさせてもらえてうれしいです。結末は今のところ何パターンか考えていますが、最近テレビとかで見るフランス映画があまりにバッドエンドが多すぎて……。それがリアルってことなのかもしれませんけど、毎回死ぬほど「なんでだ!!」ってなるのでハッピーエンドにはしたいです。

――そういえば『中学聖日記』というタイトルって、あの大人気ドラマシリーズ『中学生日記』[注1]のパロディなんでしょうか?

かわかみ  じつは……昔『高校聖夫婦』[注1]っていう大映ドラマがありまして……。ダブルで引用です。すみません!(笑)


  • 注1 『BE FREE!』 漫画家・江川達也のデビュー作品。若い高校教師・笹錦洸が、タイトルどおり自由奔放な言動で活躍し、はては文部大臣になるまでのハチャメチャコメディ。1984年~1988年に『コミックモーニング』(講談社)に掲載、実写映画化もされたヒット作。全12巻。
  • 注2 『中学生日記』 NHK制作のテレビドラマ。1974年から2012年、38年にわたって放送された人気シリーズ。主に思春期をむかえた中学生たちが直面する、恋愛や高校受験、性、さらには学校問題などを取り扱っている。
  • 注3 『高校聖夫婦』 TBS系列制作の学園ドラマ。1983年放送。ひょんなことから“カムフラージュ結婚”をするハメになってしまった高校生の男女が、じょじょに本当の愛にめざめていく物語。

取材・構成:粟生こずえ

■次回予告

次回のインタビューでは、現在パリ在住のかわかみじゅんこ先生の、知られざる「マンガ愛」に満ちた漫画家人生に迫る!?
インタビュー第2弾は10月26日(木)公開予定です! お楽しみに!

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