人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、かわかみじゅんこ先生!
「ぼく 先生の顔見ると イライラするんです」
恋心を知らなかった中学3年生の少年・黒岩晶の世界は、担任・末永聖との出会いで変わってしまった。自分の気持ちを持てあました少年少女、そして大人たちのじれったい純情ラブストーリー。
昨年、第7回「ananマンガ大賞」や『このマンガがすごい!2017』オンナ編にランクインし、マンガファンの注目度の高さを感じさせた『中学聖日記』。今回、最新第3巻の発売を記念して、著者のかわかみじゅんこ先生にインタビューをさせていただきました!
話題作の制作裏話はもちろん、気になる今後の展開も、かわかみ先生が大公開しちゃった!?
溺れそうで溺れない、変な恋愛ものを描きたかった
――主人公が思春期ド真ん中な作品はかわかみ先生の得意とするところですが、“女教師×生徒モノ”とは意外でした。この設定で描こうを考えたきっかけは?
かわかみ 某フランス小説を読んで。あ、「フランス書院[注1]」さんじゃないですよ。
――「フランス書院」って……そもそも読者さんにどのくらい伝わるか(笑)。
かわかみ すいません(笑)。戦時中の不穏な空気のなかで、婚約者のいる年上の女性との道ならぬ恋に燃える若者のお話で。これ現代の日本の学園ものにしたら、フランス人みたく刹那的な愛に溺れないで、逆にちゃんとしようとして不自然になりそうだなーと思って。
――なるほど! 当初グイグイ激情に走っていくのかと思っていたのですが、晶にも聖にも冷静に現状をちゃんと考えようとするところがあって……そこが読み手にとってはいい意味でひっかかるんですよね。
かわかみ そういう変な空気に包まれた恋愛ものが描きたいと思ったんです。でも、結局どんどん話が関係ないほうにいっちゃって、最初に考えた設定とか回収できなくて困ってますけど。
――晶のキャラクターも独特ですよね。けっこう無茶をするし、計算高さがなく純粋に思えます。見た目がカッコよくもの慣れてそうなぶん、他人からは誤解されがちかも?
かわかみ そうですね。昔から様子のおかしいちょっと天然の男の子キャラを描くのが好きなんですけど、今回はたまたま顔が綺麗だったっていう感じです。あと「イケメンは人に話を聞いてもらえない」っていう持論がありまして。おっしゃるとおり、晶はあまり自分を表現するのもうまくないし、みんなも顔に気をとられてせっかくしゃべってもだれも聞いてくれない、っていうかわいそうな感じです。
――「イケメンは人に話を聞いてもらえない」……いきなり名言出ましたね! イケメンは「何を言ったところでどうせイケメンだし」って差別されてるのかも。その気になればいくらでも彼女をつくれただろう晶に、これまで彼女がいなかったのは?
かわかみ その気になったからなった、みたいな感じじゃないですかね。その初めての気持ちの対象が聖なので、もうそこしか見えないというか。まあ恋愛は思いこみですから。
――聖はかわいいけど超美人というほどではなく、まじめで要領はよくない。受け身でスキはあるけれど、ド天然でもない。ステレオタイプでないさじ加減が、物語の読みどころにもつながっていると感じます。このキャラクター造型はどのように考えたのでしょうか。
かわかみ そうですね。そんなに全員が全員キャラが立ってなくてもいいんじゃないかなーと思って。マンガなのでキャラ立ちは大事ですけど。20歳すぎて自分をわかっていない人間がどれだけ罪深いか、みたいな。聖はなにげに我は弱くないし、めんどくさい。「そこがキャラになるんじゃ?」っていう希望を持って描いてます。
――晶が好意を示してくるとはいえ、聖は婚約中で現状に波風を立てたくないはずですよね。晶のどのような部分が、聖の心に訴えたのでしょう。
かわかみ じつは波風立つのが好きなのかもしれないですね。
――そこも、自分自身でもわかってないところかも?
かわかみ あと聖は自己評価が低いので、晶の落としつつの全肯定が、「えっ?」てなりつつ心地いいところもあるんだと思います。
- 注1 フランス書院 日本の出版社。主に官能小説や、官能コミックを専門としている。