映画『溺れるナイフ』レビュー！　ジョージ朝倉の伝説的少女マンガが菅田将暉×小松菜奈で奇跡の実写化！【あのアニ】

2016/11/05

「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。

アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい！WEB」の人気企画！
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい！」ならではの視点で作品をレビュー！　そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します！

今回紹介するのは、『溺れるナイフ』

「奇跡の実写化」なんてフレーズが乱用される昨今だが、本作にかぎっては、そんな言葉をあえて使いたくなる！
ナイフのように鋭く気高く危うい、10代の恋と衝動を描いたジョージ朝倉の伝説的少女マンガ『溺れるナイフ』。その実写化を手掛けるのは、大学在学中に独学制作した『あの娘が海辺で踊ってる』で鮮烈なデビューを飾り、その後も東京女子流主演の『5つ数えれば君の夢』などの話題作を連発。「若き天才」として日本映画シーンをざわつかさせている山戸結希。

中学生の頃に、同マンガを読んで衝撃を受けて以来、完全に血肉となってしまったという山戸監督が、初のメジャー作品を撮るにあたり、ぜひこれをと志願したーーというバックボーンはもとより、ジョージ朝倉とて、ともに「少女の自意識を描かせたら右に出るものがいない」人であり、ほとばしるような感性の作家であるからして、見る前からこれ以上はないタッグだという確信はあったが、いやはや。
想像以上というか、とんでもないものを見てしまった……というドキドキが止まらない！

夏芽とコウの2ケツシーンも注目。思春期の2人のみずみずしさが伝わってくる。

10代女子の恋と自意識の暴走、自身の可能性の模索と葛藤……。言葉にできない、ヒリヒリモヤモヤした衝動の奔流が、スクリーンをこれでもかと覆いつくす。
独創的で美しいカット、疾走感あふれる長まわし。大森靖子など同世代のカリスマミュージシャンらの音楽が、それらと激しく共鳴し、見たことのない世界へと観客を引きずり込む。作品のもつ暴力的なまでのアナーキーなパワーは、70年代ATGの諸作を彷彿させるようで、やはり唯一無比の山戸結希ワールド！

主演の2人を演じているのは、小松菜奈と菅田将暉という旬の顔ぶれだが、両者とも熊野の自然や村の祭りのスピリチュアルで野趣あふれる風景も、「現代の神話」にリアリティを与えつつ、そこからポンと飛躍してゆく不思議な異化作用を与えている。
突き動かされるような衝動が伝染してくる、忘れがたい鑑賞体験となるはずだ。

『溺れるナイフ』の映画を観たあとに……

何を隠そう、「このマンガがすごい！WEB」は、マンガの情報サイト！そんなわけで、映画『溺れるナイフ』をさらに楽しみたいアナタに、読んでほしいマンガを紹介しちゃいますよっ。

『溺れるナイフ』ジョージ朝倉

『溺れるナイフ』第1巻
ジョージ朝倉　講談社￥429+税
（2005年3月11日発売）

「別冊フレンド」で2004年～2013年に連載されたジョージ朝倉の代表作。
東京で雑誌モデルをしていた小学6年生の美少女・望月夏芽は、父の故郷である浮雲町に引っ越すことになる。東京から遠く離れた田舎町で自分が欲する「何か」から遠ざかってしまったと落ちこむ夏芽は、地元の名士の息子である少年・コウと出会い、反発しながらも互いに惹かれ合うようになる。しかし「ある事件」を境に運命の歯車は大きく狂い……。

未読の方は、これを機に原作を読んで、みずみずしくて、官能的なジョージ朝倉ワールドにどっぷりとはまってほしい。