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【インタビュー】言葉なんかいらない。太田垣流ネーム術大公開! 『機動戦士ガンダム サンダーボルト』太田垣康男【後編】

2014/07/07


『機動戦士ガンダム』について、こだわりのSF描写について……。ディープな話題が続々と飛び出した『機動戦士ガンダム サンダーボルト』(以下『サンダーボルト』)の太田垣康男先生インタビューも、ついに後編。最後は、太田垣先生独自の「マンガの作り方」について、そしてファンなら誰もが気になる、作品の今後についてを聞いた!

前編はコチラ!
【インタビュー】大人が読んで共感できるガンダムが作りたかった 『機動戦士ガンダム サンダーボルト』太田垣康男【前編】
中編はコチラ!
【インタビュー】甲子園に行くように戦争に行く若い兵士を大人の目で見るリアル。 『機動戦士ガンダム サンダーボルト』太田垣康男【中編】

太田垣康男

1967年生まれ。

代表作は『MOONLIGHT MILE』(小学館)『FRONT MISSION DOG LIFE & DOG STYLE』(スクウェア・エニックス)。

近未来の宇宙開発競争を描いた『MOONLIGHT MILE』は2007年にTVアニメ化される。

現在は「ビッグコミックスペリオール」(小学館)にて『機動戦士ガンダム サンダーボルト』を連載中。

セリフを書かずネームを切る!太田垣流「マンガの作り方」

――『サンダーボルト』の作中、かなり印象的に歌が出てきます。

ラジオから流れる歌やキャラが口ずさむ歌が、そのシーンごとの雰囲気を濃密なものにする。

ラジオから流れる歌やキャラが口ずさむ歌が、そのシーンごとの雰囲気を濃密なものにする。

太田垣 本作では意図的に使っています。主人公の気持ちとか感情をしゃべらせると、嘘っぽくなっちゃうんですよ。

――説明臭くなってしまいますね。

太田垣 テレビドラマや映画だと、役者の長台詞は苦じゃないんです。役者は滑舌もいいですしね。ただ、同じ量のセリフをマンガで書こうとすると、とんでもない文字数になってしまう。

――そこで歌に代弁させようと。

太田垣 そのときに聴いている曲の歌詞が主人公の感情を表すのであれば、あまりクサくならずにいけるかな、と思って。とくにダリルみたいな寡黙なキャラクターの場合、しゃべりませんからね(苦笑)。表情だけでは伝えづらいので、あえて意図的にチープな歌詞のラブソングを使っています。

――ではセリフはできるだけ厳選している?

太田垣 『サンダーボルト』では、絵だけでどれだけ読者を引っ張れるかを、特に意識しています。映像としての快楽を重視して、セリフは味付け程度に入れるようにしています。セリフ部分を隠した状態で読んで、どれだけストーリーを伝えられるか、と。

担当 最初のネームの段階では、太田垣先生は全然セリフを入れないんです。

――ネームといっても、いま拝見させていただいてますが、ほとんど完成原稿に近い仕上がりですよね。

見せていただいたのは、セリフもはいった「最終版」のネーム。

見せていただいたのは、セリフもはいった「最終版」のネーム。

太田垣 セリフのない状態で、1ページ目からラストまで全部やっちゃうんです。それでできあがったら、そのあとから「ここで何を言わせようか」と決めます。

――そんなマンガの描き方、あるんですか!? 「このマンガがすごい!」でも、多くの作家さんにお話を伺ってきましたが、初めて聞きました。

担当 珍しいですよ。

太田垣 『MOONLIGHT MILE』の初期から、ずっとその作り方です。

――サイコ・ザクの出撃シーン(第13話)とかアクションシーンならともかく、全編それですか?

太田垣 そうですそうです。たとえばイオが新兵を前にして演説するところ(第14話)を例にすると、セリフの中身は後付けです。

イオの印象的なセリフすらシーンを構成する一部。マンガならではの表現だ。

イオの印象的なセリフすらシーンを構成する一部。マンガならではの表現だ。

――意味がない?(笑)

太田垣 意味がない、って言うと語弊がありますね(笑)。たとえばですけど、むかし好きだった女の子と行った場所や、そこで見た景色は、僕たちは記憶していますよね。だけど、そのときに話した内容って、覚えていますか?

――よほど印象的なことでも言わないかぎり、まず覚えていないですよね。

太田垣 覚えていても、せいぜいワンワードだけです。役者さんのセリフや歌の歌詞だとスンナリ入ってくるんですけど、会話での言葉はその程度だったりします。ましてやマンガですからね。

――『MOONLIGHT MILE』ですと、吾郎が「雪山賛歌」を歌うシーンがあります(第9集)。すごく感動したんですが、じゃあその前後に吾郎が他のキャラクターとどんな会話をしたのか覚えているかというと……。

太田垣 案外、覚えてないんですよ。まず頭に浮かぶのは映像だと思います。写植で打たれた会話の文字……となると、それほど力があると思わないほうがいいんじゃないか、と思っています。ですから、気絶しているダリルに静電気が走って目が覚めて、ガンダムと相討ちする……という一連の流れ(第3集)のところはセリフも擬音もないですけど、そういうマンガの作り方をずっとやっている、と思っていただければ。

FAガンダムとサイコ・ザクの決戦の最終局面。何ページもつづく無言のページが、緊張感を生む。

FAガンダムとサイコ・ザクの決戦の最終局面。何ページもつづく無言のページが、緊張感を生む。

――これってマンガならではの手法なんでしょうか?

太田垣 どうなんでしょう? サイレント映画と同じなんじゃないかな。チャップリンと一緒(笑)。

――説明臭くならず、絵に説得力を持たせるうえで、とくに注意している点はどのようなことでしょうか?

太田垣 どこの土地に行っても人間が生活しています。赤ん坊がいて、若い男女がいて、お年寄りがいて……、どこかでかならず葬式がある。そういった日常をちゃんと描いてこそ、世界を構築できるんだと思います。それはスペースコロニーのような世界でも一緒。そういった人間の営みを描かないと、世界を描けないはずです。とくにSFみたいな作り物の世界の場合、そういうリアリティを多く入れないと伝わらないでしょうね。普通の町中であれば、写真を撮ると、そこかしこに生活感が写り込みます。SFの場合は、意識して描いていかないと生活感が出ないので、そこは自分の引き出しがどれだけあるか、試される部分だと思って気をつけています。

――コロニーの残骸の中に三輪車が浮遊しているシーン(第7話)は、印象的に覚えています。

かつてそこに人が住んでいた気配。サンダーボルト宙域の荒廃は一年戦争を象徴する。

かつてそこに人が住んでいた気配。サンダーボルト宙域の荒廃は一年戦争を象徴する

太田垣 ありがとうございます。その直前にも、子ども部屋の瓦礫の奥に旧ザクを漂わせていますが、そういった工夫をしないと世界観にリアリティが出てこないんですね。ただ、そうやって工夫したところは、やはり読者の皆さんは覚えてくれているんですよ。だからやり甲斐はあります。

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