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【インタビュー】藤本タツキ『ファイアパンチ』 1巻ごとにジャンルが変わる!? トガタの登場は計算された「裏切り」!? その真相に迫る!!

2017/02/27


1巻が「復讐劇」なら、2巻は「◯◯◯」!?
藤本流マンガづくりの秘訣は、コミックス単位での発想にあり!!

――実際に連載を開始して、想定していたストーリーと変わった部分はありますか?

藤本 ストーリーの骨の部分は変わっていないです。ただ、言葉選びとか、キャラクターのちょっとした動きとかは、変わってきています。それを最初に決めたストーリーにどう落ちつけていくか、担当さんと打ち合わせながら進めています。

――その「キャラクターの言動が変わる」というのは、いわゆる「キャラが動く」というようなことでしょうか?

藤本 うーん、キャラが動く……。その感覚が、ちょっとわからないです。

担当 打ちあわせの時に僕からいろいろ提案をすると、「アグニはこういう表情はしない」とか「アグニはそういうことはしない」とは、よくいわれますね。

――そういった会話をとおして、藤本先生のなかでの「アグニ像」は、明確にシェイプされてきた感覚はあります?

藤本 それはすごいあります。

――ストーリー上で起きる出来事は決まっているけど、いざ実際にそこに行ってみると、キャラクターがその行動を取るにはもうひとアイデア必要だな、と感じる?

藤本 そうです、そうです。

担当 おそらく、その作業とストーリーを作るのを同時にやるから、「キャラが動く」という言い方がされるんでしょうね。藤本先生はあらかじめストーリーを決めているけど、いわゆる「キャラが動く」と同じようなことは起きていると思います。

―― 一番「動いた」というか、最初の設定から変わったキャラはだれでしょう?

藤本 トガタです。僕のなかでトガタは、この1~3巻のあいだでは、主人公側にするか、敵側にするか、どちらもアイデアはあったんです。それで敵側にしようと思って進めていたんですが、もうちょっと使えそうだな、ということで主人公側に変わりました。

たしかに、アグニに協力するトガタには、敵側のキャラでも違和感のない「クレイジー」で「底知れない」側面が。

たしかに、アグニに協力するトガタには、敵側のキャラでも違和感のない「クレイジー」で「底知れない」側面が。

――今お話を聞いていると、コミックス単位で話を組み立ててるんですね。

担当 今は基本的にコミックス単位での打ちあわせをしています。コミックス派も多いので、コミックスで読んだ時に一番おもしろいことを目指そう、と藤本先生とは話してます。

藤本 1巻ごとにジャンルを変えたくて。

――ジャンルを変える?

藤本 1巻は復讐劇みたいに始まりますけど、2巻ではその第1巻を否定して、ギャグマンガにしたかったんですね。

――なるほど! トガタが電車のなかでベヘムドルグ兵を殺すシーンがあるんですけど、喉から刺したナイフの先端が頭頂部に突き抜けているじゃないですか。あれってギャグでやってるんですよね?

衝撃的なシーンですが、ナイフを刺されたベヘムドルグ兵の頭をよ~く見てみると……?

衝撃的なシーンですが、ナイフを刺されたベヘムドルグ兵の頭をよ~く見てみると……?

藤本 そうですよ、あれギャグですよ(笑)。

――アグニとトガタが、ユダの首を持って海辺を追いかけっこするところなんか、完全にギャグですよね。

海でキャッキャッする楽しさ100%のトガタとそれに巻きこまれるアグニ、そして生首のユダ。 「シリアスな笑い」のお手本のようなワンシーン。

海でキャッキャッする楽しさ100%のトガタとそれに巻きこまれるアグニ、そして生首のユダ。
「シリアスな笑い」のお手本のようなワンシーン。

藤本 そうですね。大筋のストーリーは決めたとおりで、話ごとに全部意味はつけているんですけど、そういうとこはギャグにしていこう、と。

――なぜ2巻はギャグにしたんですか?

藤本 2巻では1巻を茶化したかったんです。トガタがつけいるスキをいっぱい与えたいな、と。

――では、3巻は?

藤本 否定の否定、ではないんですけど、3巻では2巻を否定したかったです。

――3巻ではもう一度ヒーローものっぽいところに戻ってきましたもんね。

藤本 そうですね、一回崩さないとカタルシス的なものが得られないと思ったんです。

まさしくヒーローの必殺技! その名は……わかりますよね?

まさしくヒーローの必殺技! その名は……わかりますよね?

――もしかして、どストレートにヒーローものをやることに抵抗がありました?

藤本 うーん……。ヒーローとか正義って、現実世界でやろうとすると、極端なところにいっちゃうじゃないですか。

――今だと過激派組織とかになっちゃいますよね。

藤本 そうそう。いくところまでいくとエゴになっちゃうんじゃないかな、と危惧していたんです。だからヒーローものをやるなら、その構造から見直さないとな、とは思っていました。
それがマンガのなかでうまくできたかどうかは、わからないんですけどね。ただ、ヒーローものっていうのもひとつの皮であって、もっとテーマ的なものに沿っていければいいな、と思っています。

――そのテーマ的な部分って、マンガの本質的なところに関わるので、現状ではお聞きしないほうがいいですよね。
では、ヒーローものやバトルものを応用してはいるけれど、それはやりたかったことのすべてではない、と?

藤本 本当はそういったバトルものを楽しむようなところがあったほうがいいんでしょうけどね。だからいろいろな能力を持った「祝福者」は出てきますけど、特に気に入っている能力とかはないんです。

様々な能力者が登場するアメコミ『X-MEN』を彷彿とさせる、祝福者たちの多様な能力。

様々な能力者が登場するアメコミ『X-MEN』を彷彿とさせる、祝福者たちの多様な能力。

――それは、能力バトルをやりたいわけではないから?

藤本 まぁ、雪のなかの世界ですから、普通の能力では生きていけないと思うんです。そうすると必然的に再生能力者ばかりになっちゃうかなぁ。

――2巻でトガタが「なんで再生の能力者ばっかなんだよ」っていうシーンがありますけど、あれは作品に対するメタ的なギャグでありつつ、世界観を匂わせるセリフなんですね。

藤本 そういう人(再生能力者)しか生き残れないような世界ですから。

――ただ、主人公のアグニに関しては、再生能力の使い方が秀逸だと思いました。全身が燃えているキャラクターは、それこそヒューマン・トーチ(アメコミ『ファンタスティック・フォー』に登場するキャラクター)とか、ゴーストライダー(同名のアメコミを原作とする映画『ゴーストライダー』の主人公)など過去にもありましたけど、本作のアグニの理由づけはものすごくおもしろいですね。

藤本 アグニの能力を思いついた時はワクワクしました。燃え続けながら、死ぬことはできるんだけど、何か目的があって生きている。担当さんからは「どうにか服を着させてほしい」とはいわれましたけど(笑)。

担当 最初の頃はね(笑)。

藤本 アグニの身体って、破壊と同時に再生が始まっているんですよ。

――それは先ほどおっしゃった「1回崩さないと」といった部分にも通じるところがある、と。

藤本 3巻でベヘムドルグで戦うシーン(3巻第21話)は、建物が破壊されていて、でもアグニは再生をしていて、みたいなところはあります。

崩れ落ちる建物とは対照的に、すぐさま再生するアグニ。読者にすら畏怖を抱かせる迫力の描写!!

崩れ落ちる建物とは対照的に、すぐさま再生するアグニ。読者にすら畏怖を抱かせる迫力の描写!!

――あの回は、かなり力を入れて描いていたように見受けられましたが?

藤本 あそこを描くのは最初から決まっていたので、2巻の第11話を描き終わった頃には、もうあそこ(3巻第21話)を描き始めていました。

担当 ずいぶん前にネームをあげていましたね。

――『ファイアパンチ』は週刊連載だから、3カ月くらい先の回じゃないですか。とにかく早く描きたかった?

藤本 そうですね。今までずっと溜めてきたものを一気に解放するところなので、作画もしっかりとやらないといけないと思っていました。とにかくたいへんでした。

担当 描きこみとか、週刊連載の画面ではないですよね、確実に。

藤本 アシスタントさんが背景をがんばってくれたので。

――今、作業体制はどんな感じですか?

藤本 アシスタントさんが6~7人かな? すぐにでもデビューしそうなウマイ人がいるので、その方がいつデビューしてもいいように、育成枠を含めて多めに入ってもらっています。

――これ、背景はデジタル?

藤本 僕だけがフルデジタルなんです。うまい人を集めてもらったら、みんなアナログで。第21話の背景は、アシスタントさんがアナログで描いてくれたのをパソコンに取りこんで、僕が燃やしていきました。

アナログとデジタルの融合で生まれた背景があるからこそ、アグニたちのアクションが活きるのだ!

アナログとデジタルの融合で生まれた背景があるからこそ、アグニたちのアクションが活きるのだ!

――デジタルはそういう使い方もできるんですね。では、最後に気になる第4巻(3月3日発売予定)の見どころを教えてください。

藤本 新しい章が始まります。トガタの秘密が明かされたり、「氷の魔女」っぽいヤツの目的が出てきたり……。たぶん6~8巻くらいまでいくと、僕がやりたかったことが見えてくるんじゃないかと思います。

担当 今年中に、なんとかそこまでいきたいですよね。ただ、そこに至るまでも、毎回のエピソードとかヒキでね、読者を楽しませていかないと。

藤本 そこは本当に担当さんから毎回いわれているので……。

――ただ、今回のインタビューで「このマンガがすごい!WEB」の読者には、「最後まで安心して裏切られていいぞ」とはいえますからね。

藤本 初連載の作品なので、どうにかきれいに終わらせようとがんばります。

――今後の連載も楽しみにしています! 藤本先生、ありがとうございました!

取材・構成:加山竜司


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