『想いの欠片』第3巻
竹宮ジン 白泉社 \743+税
(2014年12月25日発売)
恋の喜びと、ほろ苦さを繊細に描いたガールズラブコミックの名作が完結。
本作の魅力は、主要な登場人物全員が主人公と読めるほど、それぞれの心理が描きこまれているところといえるだろう。
女子大生の家庭教師・サヤカに想いを寄せる、高校生のミカ。
ミカはサヤカにふられたのちに、ゲイタウンでうろついているうちにばったり同級生のイケメン・原田と出くわし同胞と知る。そうこうするうちに、原田の妹・マユは、兄と仲よさげなミカにつっかかりながらも、彼女にひかれていく。
こうした、さまざまな「想いの欠片」をていねいにすくいあげながら編まれた物語には、わずかなスキもない。
最終巻では、ミカとサヤカの再会も描かれるのだが、ここで意外な強さを見せるマユの言動に恋がもたらした彼女の成長を知る。
また、ミカに想いを寄せるマユを見守る、マユの親友・サキの動向もクローズアップされる……クライマックスらしい見どころがいっぱいだ。
恋が成就したらすばらしいけれど……、たとえ叶わなくても恋がもたらしてくれるものはたくさんある。そんなことを伝えてくれる結末だからこそ、また最初から読み返したくなってしまうのだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」