『さ迷える心臓 二宮ひかる作品集2』
二宮ひかる 白泉社 \743+税
(2014年11月28日発売)
二宮ひかるは、人間の性を通じて生を描くことに長けた作家だ。
たとえば短編「花火の恋」。エロ漫画家の娘・花火は、彼氏とセックスすることに興味がわかない。
「あんたとセックスしたくないあたしは、あなたを愛してないってことなのかな?」
母親はいっさい家事をせず、アシスタントと称しては若い男を引っ張りこんでいる。こんな環境では「愛する」の意味はどうもつかめない。
しかし、あることをきっかけに、母親の愛情と、自分が生きている感覚を理解する。彼女はその後、彼氏とセックスをする。
「セックスって簡単だねえ。簡単にアイシテルとか言えちゃうんだねえ」
はっきりとした白黒をつけず、心理を曖昧なまま描いていく。ほとんどの作品に、ハッピーエンドもバッドエンドもない。
なかでも問題作である、タイトルにもなっている「さ迷える心臓」は、一度は読んでみてほしい。
最初は、心臓がふたつあると女医に言われる青年の話から始まる。ところが次にくるのが、全然関係ない片思いの少年の話。その次が、別れると言ってからも泣きながらすがってくる女の話。そして生徒の少女の膝にすがりついて泣き崩れる先生の話。
物語としてはまったくつながっていない。しかし、どうにも関係があるように思えてならない。
最初の青年の心臓が、行ったりきたりしている、とも取れるタイトル。そのような描写はないのだが……。
つながっているように感じる、という人はそれでいい。つながってないじゃん、という人もそれでいい。
二宮ひかるのマンガは、自分の性と心理を映す鏡。もしかしたら後日、理解できる日が来るかもしれないし、急にわからなくなるかもしれない。そこが魅力なのだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」