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劇場版アニメ『君の名は。』レビュー! こんな新海誠、見たことない! “ポスト宮崎駿”といわれるアニメ監督が魅せる、スペクタクルな恋物語【あのアニ】

2016/09/06



「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。

アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の人気企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品をレビュー! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!

今回紹介するのは、劇場版アニメ『君の名は。』

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8月26日より公開している映画『君の名は。』は新海誠の最新作である、と書くだけで反応は「絶対観に行く」派と「絶対観に行かねー」派に別れそうだ。

ほしのこえ』『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』……新海誠は「新海誠的」と言うほかない作品をつくり続けてきた。コンビニやバス停、新宿の雑踏……ありふれた、あるいは見慣れた景色を驚くほど美しく描き出す背景美術、視聴者の心に突き刺さる切実なモノローグ、そして一貫して描かれる引き裂かれた男女というテーマなど、極めて強い個性をその作品に放っている作家だ。
それだけに評者のような『ほしのこえ』の「セカイっていう言葉がある」というモノローグだけで涙腺が決壊する熱烈なファンと同じぐらい、彼の作品が苦手な人も多いはず。

だが、最新作『君の名は。』は、そんな「新海誠は苦手」という人にこそ見てほしい作品だ。

東京の男子高校生・立花瀧と、山深い田舎町の女子高校生・宮水三葉の体が入れ替わることで始まる、東京都心と小さく狭い糸守町との奇妙な交流……と話自体は、遠距離恋愛という「いつもの新海」だが、試写会で観た評者はたいへん驚いた。
なるほど美しい風景や繊細な言語感覚などは確実に「いつもの新海」だ。だがそれ以上に、この映画は「いつもの新海」には絶対になかったもので構成されていたからだ。

「東京のイケメン男子にしてくださーい!!!」三葉の願いは思わぬ形で成就する!? 2人の特別な結びつきとは!?"

「東京のイケメン男子にしてくださーい!!!」三葉の願いは思わぬ形で成就する!? 2人の特別な結びつきとは!?

たとえば、心と体が入れ違った男女の姿をたいへんコミカルに描くラブコメ展開がある。それにまぎれて巧みに伏線を張り「あっ!」と視聴者を驚かせる大転換がある。この先どうなるとハラハラさせるクライマックスがあり……つまりまっとうなエンターテインメントなのだ。新海作品なのに。

入れ替わっても残されたお互いのメモで交流する2人。時にケンカもしながらも、だんだんと打ち解けていくが……?

入れ替わっても残されたお互いのメモで交流する2人。時にケンカもしながらも、だんだんと打ち解けていくが……?

試写を見終えて評者は泣いた。
たいへん感動的なストーリーだったからだが、しかしそれだけではない。

新海誠は、わからないヤツには絶対わからない映画ばかり撮る作家だった。
新海誠がわかるオレたちのためだけの映画を撮ってくれる、オレたちの、いや、オレだけの作家のはずだった。その新海誠が、ついにみんなが笑って泣いて楽しめる、家族で観にいってもまったく問題ないエンターテイントを撮ってしまった。オレの新海誠は、世界の新海誠になってしまった。だからうれしさ半分、さびしさ半分で泣いたのである(自分で書いていて本当に気持ち悪いと思う。ごめんなさい)。

新海誠といえば、やはり映像美! 本作でも思わず息をのんでしまうシーンが多い。

新海誠といえば、やはり映像美! 本作でも思わず息をのんでしまうシーンが多い。

そういうわけで繰りかえすが「新海誠は苦手」な皆さんにこそ劇場に行ってほしい。
そして大いに笑って泣いて楽しんでいただくことで、「新海誠が“オレだけの新海誠”から“世界の新海誠”になってしまった」という評者の感想の正しさを、証明してほしいのである。


劇場版アニメ『君の名は。』を観たあとに……

何を隠そう、「このマンガがすごい!WEB」は、マンガの情報サイト! そんなわけで、劇場版アニメ『君の名は。』をさらに楽しみたいアナタに、読んでほしいマンガを紹介しちゃいますよっ。


『ほしのこえ』佐原ミズ(画) 新海誠(作)

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『ほしのこえ』第1巻
佐原ミズ(画) 新海誠(作) 講談社 ¥657+税
(2005年2月23日発売)

同じ高校に進学することを夢見ていた中学生のノボルとミカコ……だが、ミカコは国連軍のパイロットに選ばれ宇宙に旅立つことになる。携帯のメールでやりとりする2人だが、宇宙艦隊が地球から光年単位で離れていくにつれ、2人の時間は大きくずれていく……新海誠の名前を一躍有名にした個人制作アニメ『ほしのこえ』。そのコミカライズである本書は『マイガール』などで知られる佐原ミズの初単行本。原作にない登場人物も追加され、群像劇としての魅力が生まれている。


『秒速5センチメートル』清家雪子(画)新海誠(作)

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『秒速5センチメートル』第1巻
清家雪子(画)新海 誠(作) 講談社 ¥562+税
(2010年11月22日発売)

転校生同士ということでお互いをかけがえのない存在として認識していた小学生の遠野貴樹と篠原明里。だが明里の転校により、2人は引き裂かれることになる……。「喪失の痛みを抱えた男」という新海誠のテーマがもっとも率直に展開された『秒速5センチメートル』は、氏の代表作と呼ぶにふさわしい作品だ。そのコミカライズである本書は、『まじめな時間』『月に吠えらんねえ』で知られる清家雪子のデビュー作。原作を補完するとともにもうひとつの結末を描きだしている。


映画情報:君の名は。

公開日:大ヒット上映中
配給:東宝

■CAST
立花瀧:神木隆之介
宮水三葉:上白石萌音
勅使河原克彦:成田凌
名取早耶香:悠木碧
藤井司:島﨑信長
高木真太:石川界人
宮水四葉:谷花音
奥寺ミキ:長澤まさみ
宮水一葉:市原悦子
ほか

■STAFF
監督・原作・脚本:新海誠
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:安藤雅司
音楽:RADWIMPS
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム

■公式サイト
www.kiminona.com

■公式twitter
@kiminona_movie



<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas

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