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『思春期ビターチェンジ』第4巻 将良 【日刊マンガガイド】

2015/05/25


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『思春期ビターチェンジ』第4巻
将良 ほるぷ出版 \570+税
(2015年5月15日発売)


小学生の時に、とある事故で人格が入れ替わってしまったユイとユウタ。
異性の身体と、慣れない環境で生きていくことになった2人が、どんな日々を過ごすのか……。小・中・高とかけぬけるように時間が進んでいくなかで、2人が戸惑いながらも成長していく姿を描いた作品。

2人の“入れ替わり”の秘密を知り、何度も助けてくれた共通の親友・高岡和馬に対して、親友以上の感情を持ってしまっていること、ありていに言えば「恋」をしていることを自覚してしまうユイ。
身体的には同性愛であるだけでなく、幼なじみの親友であり、おまけに和馬には他校生の彼女までいるらしい。困惑し、絶望しかけるユイ。

他方でユウタには、不良であまり学校に来ない橘隼人という新しい友人ができる。
噂好きのチャラい女の子に詮索されるのではないかと懸念する隼人だったが、ユウタの実直な性格を知り除々に打ち解けていく。…打ち解けていくのだが、今巻ではちょっと行きすぎそうになってハラハラ。

高校生になって新しくユイとユウタの友だちになる音楽少年・ひかるの存在も気になる。
まわりから軽くウザがられるほど底抜けに明るく、ウザがられるのなんて気にしない!みたいなひかるにも悩みはあって、バンド仲間の才能に人知れず深く嫉妬して、自分の才能には自信を失いかけていたりする。
そんなひかるの弱い部分は、“入れ替わり”に加えて苦すぎる恋の悩みを抱えるユイと共鳴するところがあるのかも知れない。

さらには、中学生編で登場した木下さんが再登場。
かつてユイのことを好きになってしまい、振られたという過去を持つ木下さん。彼女は“入れ替わり”のことを知らないので、ユウタを好きになったと思っている。
今でもその気持ちは変わらないという木下さんは、かつてと違って、今のユイには不思議な安心を与えてくれる存在になった。

ただでさえ自分の身体が変化し、それに合わせて周囲とギクシャクしがちな思春期に、身体が入れ替わってしまうという衝撃的な体験をするユイとユウタ。
描きようによっては鬱々とした作品にもなったであろう設定だけど、本作には過剰な重苦しさはない。
登場人物たちの困惑をリアルに描きつつも、性格の素直さや、表情のかわいらしさ、随所にちりばめられる笑いの要素によって、読み口はどこまでもさわやか。

読み進むほどに、ユイとユウタのことが読者はきっと好きになり、2人の幸せを願わずにはいられない。
だけど、この先どうなってしまうんだろう……結末が想像できない! まだまだ目が離せない作品。



<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
Twitter:@nnnnnnnnnnn
Twitter:@n11books

単行本情報

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