日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『春と盆暗』
『春と盆暗』
熊倉献 講談社 ¥590+税
(2017年1月23日発売)
春だ! 恋だ! 変態だーーー!
ぼんくら男子とエイリアン女子のLA・LA・LAND!?
突然やってきた恋の相手が、「変人」だったらどうします?
4つの短編からなるオムニバスのこのマンガ、ラブコメ(?)でありながらライバル出現も気持ちの探りあいも突然のキスも、王道展開いっさいなし。
というか、「普通」な女子は出てきません。
たとえば第3話「仙人掌使いの弟子」に登場するのは、「咳のひどい奴がマスクをすると銀河が崩壊する」とまじめに語るサボテンフリークなお姉さん。
チラ見しただけでも、けっこう、いやいや相当の変人。
ほかの3編の女の子も同じくらいのエキセントリックぞろい。
こんな不思議系女子に恋する男子も相当変わってんじゃないの? と思っていたら、みーんな「普通」なんだな、これが。
仕事はそんなにできないし、クラスのイジメに悩みながら、その場では声を出せずうじうじと解決策を考えている。
バイト先のおばちゃんに「ボンクラだと思ってた」なんていわれたりする、どこにでもいるさえない男の子。
そんなぼんくら男子が、自分と違う星に住む女の子に強烈に惹きつけられていくのです。
しかし、このラブストーリーは一筋縄ではいきません。
「変人と恋をする者はまた、自分も変人にならなければいけない」……と思うのかはどうかはわかりませんが、女の子の頭のなかを理解しようとがんばる男子たち。
「仙人掌使いの弟子」の男の子も、同じタイミングでサボテンをもらったはとこのお姉さんとの話題づくりに、がらにもなく(?)自分もサボテンを育て始めたりします。け、けなげ……!
しかし、お姉さんは「サボテンに甲子園の砂をあげると球児の熱でよく育つ」など、斜め上をいくアドバイス。この恋、実るのか……!?
2人だけで進む幻想的な世界はぶっちゃけ他人から見るとよくわからないですが、恋愛の王道って本来はそういうものかも。
――ドラマティックな展開なんていらない。相手をもっとよく知ろうとする過程そのものが、恋愛なの(ブルゾンちえみ風)。
「理解し合うためにはお互い似ていなくてはならない。 しかし愛し合うためには少しばかり違っていなくてはならない」
なーんて名言もありますが、完全にブッとんでる相手には、恋に落ちるしかないのかもしれませんね!
てなわけで、『春と盆暗』、恋の季節におすすめです!
<文・億千万太郎>
大自然出身、大都会在住の編集・ライター。わりとミーハー。