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『斬殺サーカス』第1巻 御茶漬海苔 【日刊マンガガイド】

2014/09/17


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『斬殺サーカス』第1巻
御茶漬海苔 学研マーケティング \600+税
(2014年8月30日発売)


本作『斬殺(ギロチン)サーカス』は、未来に甦った織田信長が、血みどろの戦いを繰り広げるという異色作。SFの部類に属する作品ということになるが、本作は一味も二味も違う。
なにせ作者は、御茶漬海苔。『惨劇館』『恐怖テレビ TVO』『恐怖実験室』など、日本には珍しい欧米型のスプラッタやサイコサスペンスのテイストを取り入れて、ファンを魅了してきた作者だけに、本作も異色にして出色のSFホラーに仕上がっている。

本能寺の変から、数百年後。未来の世界では、明智光秀の子孫が明智コンツェルンを築き上げて社会を支配している。そこで彼らが行っているのは、歴史上の偉人をクローンで再生させて、見世物にするというサーカス展示。ただ、武田信玄、豊臣秀吉、徳川家康と、戦国武将たちも次々クローン化されているなかで、光秀が討った織田信長だけは危険な存在だとしてクローン化されずにいる。
しかしついに、その禁が破られる。クローンサーカスの運営で助手を務める蘭丸が、明智をそそのかしたのだ。再生の条件は、頭部だけというもの。しかしそれが、この世界を大きく変えていくことになる。

溶液に浸されて管を繋がれ、ガラスケースに収められている信長の首という図だけでもショッキングだが、さらにそんな姿を秀吉に見られて、小バカにしたように笑われたりする。
しかし、やがて信長は蘭丸の身体を譲り受け、完全体として復活。殺戮の惨劇はそこから始まっていく……。

SFアクションものとしては、歴史上の偉人や武人たちのクローンと、信長との戦いが大きな見どころだ。ただ、信長はほかのクローンたちとは違い、新たな身体を得たことで、あらためて人間として再生している。つまりこの戦いは、信長=人間たちと、明智ら一派=クローンたちとの戦いなのだ。クローンが支配する社会で、人間が反撃の狼煙を上げる。殺戮ではあっても、信長の“武”には“義”もある。

御茶漬海苔はそのエッジの効いたタッチの中、スプラッタにしろサイコにしろ、一貫して王道のホラーを描き続けてきた作家だ。本作も、設定は作者の他作と比べても異質ながら、ドラマはやはりホラーの王道をいっている。
もっとグチャグチャにして、めちゃくちゃにやってほしい! 信長に、そんなことも託したくなる作品。誰も真似できない、唯一無二のホラーマンガ家・御茶漬海苔の魅力が存分に味わえるはずだ。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。

単行本情報

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