日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『エリア51』
『エリア51』 第15巻
久正人 新潮社 ¥600+税
(2017年9月8日発売)
モンスター、UMA、そしてアマテラスやゼウスといった神々――世界中の異形を集めて隔離したアメリカ51番目の州、それがエリア51だ。
異形が集まるエリア51で、探偵事務所を構える真鯉徳子(マッコイ)は、ちょっとワケありの人間だ。マッコイは、河童のキシローや「王子」を相棒に、「パイク」と名づけたコルトM1911の付喪神を片手に暴れまわる。
刑事であったマッコイは、エリア51がらみの事件を追ううちに、相棒や恋人を殺され、恋人との間にできた子どもも奪われてしまう。
悲痛な過去を抱えたマッコイの仇敵への復讐譚――というのが本作を貫く大きな物語である。
そうした復讐譚を底流に持ちながら、本作の基本的なフォーマットは、マッコイが異形たちから依頼された厄介ごとを解決する1話完結型のストーリーである(だから、非常にとっつきやすい)。
ただし、持ちこまれるトラブルが、盗癖のある壺(当然、付喪神と化す)の探索だったり、サンタクロースの衣装探しだったりするのがエリア51ならでは。そうした事件を、マッコイはエリア51だからこそ可能なやり方で解決する。
こうした1話ごとの久正人の物語づくりのうまさは驚異的である。
そのような珠玉の短編の間を、神々の抗争(たとえば、エジプト神話vs日本神話)といった大きな活劇ドラマがつないでゆく。
そうした巨大化した神々が争う場面は、怪獣好きの久正人の面目躍如だ。
作中には、様々な特撮作品のパロディが盛りこまれているので、怪獣ファン、特撮マニアであれば充分楽しめる作品だと思う。
ところで、人間であるマッコイが、エリア51で生き残っていられるのは、三種の神器の「草薙の剣」が体内に埋めこまれているためだ。
その存在ゆえに、前巻で神々を統べる「十神会議」も、マッコイに対しては不干渉という対応を取ることとなった。
ただし、「草薙の剣」が体内にあって無事であるはずもなく、マッコイは剣の拒絶反応と戦いながら生きている。拒絶反応で生命を喪う前に、マッコイは復讐を果たすことができるのか?
このタイムリミット感もまた、本作の魅力なのである。
様々な読みどころにあふれた『エリア51』も、最新刊の第15巻で完結となる。
仇敵を追い詰めるため、自ら進んで「お尋ね者」となるマッコイ。
捨て身の作戦は功を奏するのか?
ぜひとも手にとって、マッコイの生きざまを見届けてほしい。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。「2017本格ミステリ・ベスト10」(原書房)でミステリコミックの年間レビューを担当。