日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『エリア51』
『エリア51』 第14巻
久正人 新潮社 ¥552+税
(2017年2月9日発売)
本業のマンガだけでなく、スーパー戦隊シリーズ最新作『宇宙戦隊キュウレンジャー』のコンセプトアートでも大きな注目を集めることとなった久正人。
そしてまさに今、ノリに乗っているというタイミングで刊行された『エリア51』の最新刊も、やはりバツグンにノリノリなのである。
あらためて本作の要点を簡潔に書いておくと、舞台となるのは古今東西の怪物やUMAからはては神まで、人間にとってはあらゆる「異形」である者たちが隔離された、アメリカ51番目の州。
それを人々は「エリア51」と呼ぶ。そこで人間でありながら探偵業を営む真鯉徳子(通称:マッコイ)は、相棒である河童のキシローとともに、様々な事件に遭遇する──というのが基本ストーリー。
……とはいうものの、マッコイの出自にも絡んだ大きなエピソードも展開し、現在はもはや「探偵もの」というフォーマットからは大きく逸脱していることもつけ加えておこう。
もっとも、もとよりひとつのジャンルに縛られるような作品ではなく、その「ごった煮」感覚こそがなによりも魅力ではあるのだが。
さて、最新巻でメインとなるのは、ここ数巻にわたって続いていたエジプト神話と日本神話の神々たちによる戦争(というよりは、ギャングの抗争に近いテイスト)の完結編。
神に対してこういうのもなんだが、アマテラスがイイ女すぎ! 惚れる!
その圧倒的スケールとほろ苦い結末はもちろん注目なわけだが、都市伝説として語られる現代妖怪たちや、某有名巨大ヒーローを思わせる宇宙人などが登場するショートストーリーも要注目。
その小気味のよい短編にこそ、久正人の作家性が凝縮されているといえるかもしれない。
そして最終エピソードは、いよいよ最後の戦いへ──。
泣いても笑っても、次巻で完結することが告知されている。
この愛すべき作品が終わってしまうことには、正直なところ一抹どころではないさびしさがあるのだが、どのような幕引きを見せてくれるのか、今から期待するしかないだろう。
なんなら、いわゆる「終わる終わる詐欺」でも、ファンとしてはいっこうにかまいませんが……。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。