『エリア51』第10巻
久正人 新潮社 \552+税
(2015年5月9日発売)
吸血鬼やカッパといったモンスターから、ネッシーやビッグフットなどのUMA、あげくのはてにはシヴァやハデスなんて神様まで……世界中のありとあらゆる人外の存在が隔離された、アメリカ51番目の州「エリア51」を舞台に、女探偵・真鯉徳子(通称マッコイ)とエリア51の異形たちが巻き起こす事件を描いた、モンスター漫画家の大家・久正人の傑作異形マンガに第10巻が登場。
9巻から引き続き、サトリの少女・ネモリが持つ読心能力の暴走により、消滅の危機に陥ったエリア51……という大騒動の結末が描かれる今巻。
地球の存在が危ぶまれるほどの爆発をネモリが起こしてしまうということで、軍は核ミサイルによってネモリをエリア51ごと抹殺しようともくろむ。
マッコイはギリギリまで彼女を助けようと奔走するのだが、毎度のことながら、綺麗に幕を閉じる結末のみごとさには息を呑まされる。
ネモリの能力の暴走により引き起こされる同座標消滅の脅威や、前巻より登場しているサンジェルマン伯爵の時間移動能力を活かしたみごとな事件の決着は、ぜひその目で確かめていただきたい。
秀逸なショートショートとして楽しい43話や、アマテラスがメインのちょっとせつない温泉回である44話など、満足度じゅうぶん。
長編のダイナミックなおもしろさと、思わず「ほうっ!」(偉そう)とうならせられる短編を同時に楽しめる1冊だ。
<文・山田幸彦>
91年生、富野由悠季と映画と暴力的な洋ゲーをこよなく愛するライター。怪獣からガンダムまで、節操なく書かせていただいております。
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