『ノブナガン』第5巻
久正人 アース・スターエンターテイメント \595+税
(2014年12月12日発売)
『ジャバウォッキー』や『エリア51』など、ひたすら異形の物語を描き続ける久正人の作品のなかでは、作者曰く「ド直球なヒーローアクション」とコメントしていた本作。
しかし、実際はどちらかといえば「豪速球だけど思いっきり変化球」といった印象の、やっぱり久正人らしいマニアックなバトルアクションである。もちろん、そのヒネクレっぷりこそが魅力なのだが。
2014年にアニメ化もされたのでご存じの読者もいるかと思うが、いちおうおおまかに内容を紹介しておくと、歴史上の偉人の魂を受け継ぐ特殊能力者「E遺伝子(イージーン)ホルダー」と、強大な進化生命体(いわゆる宇宙怪獣)との死闘を描くSFアクション。
偉人の才能をヒーローの能力へと転化しているのがまず本作の特色だが、主人公の女子高生・小椋しおは織田信長(能力は体の一部を銃とすることで、信長らしく三段撃ちが必殺技)というメジャーな偉人の魂を持つものの、そのほかの能力者は偉人のチョイスや、発動する能力はクセのあるものばかり。だいたい、「切り裂きジャック」って偉人なのか? など、そのヒネ具合がいいのである。
さらに、進化生命体の凝りに凝った設定や、こだわりの兵器描写なども“そのスジの人”なら燃えるポイントである。
前巻の終盤までは、熱いバトル、そしてしおを世界で一番信頼してくれている親友・浅尾さんとの再会、ジャックの愛の告白……と頂点まで持ち上げておきながら、直後に起きた惨劇によって、しおの精神はどん底に──という、これ以上ないぐらいバッドな展開からの最新5巻。
ところが事態はまったく好転せず、まさかの「暴走モード」発動でさらに事態は悪い方向へ。
ガウディのE遺伝子ホルダーの能力が「地面から瞬時に建築物を出現させる」という、「だったらサグラダ・ファミリアもとっとと完成させろよ!」というツッコミ待ちのような能力も笑えないぐらい、ひたすら忍耐のターンである。
いったいここからどう復活するのか気が気ではないのだが、ひとまずは掲載誌が休刊という作品自体のピンチを乗り越え、WEBで連載が継続されたことには安心した次第。
小椋しおも、最大のピンチから立ち上がるのを応援しています。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。