『KEYMAN』第7巻
わらいなく 徳間書店 \620+税
(2014年8月12日発売)
日本には仮面ライダー、スーパー戦隊、ウルトラマンという3大ヒーローが現在もバリバリの現役であるせいか、その影響を受けていないヒーロー系のマンガは意外と少ないかもしれない。
しかしこの『KEYMAN』は、単に絵のタッチや擬音がそれっぽいだけではない、日本には珍しい「根っからアメコミ臭」がプンプンする超人マンガである。
舞台となるのは、ふつうの人間である「人類種」と、様々な獣の姿をした「獣人種」の共存する世界。そして「いかにもヒーロー」という風体の超人・キーマンが街を守っている……と、物語の冒頭こそは「よくあるヒーローマンガ」のような始まりだが、早々にそのキーマンが何者かに殺されてしまうことで物語は急転直下。
そして単に彼は「ヒーローのキーマン」であり、様々な力のキーマンが存在することが示される。事件を追うのは、ティラノサウルスの獣人種(見た目はどちらかといえばクロコダイルのようであるが)であり、かなり昔気質ともいえる刑事のアレックス警部。そして事件の秘密を知る、見た目は幼女のようなDr.ネクロたちを中心に物語は展開する。
本作でメインとなるのは、あくまでも破壊と暴力が支配するドラスティックな物語ではあるが、根底に流れる「マイノリティへの差別」への目配せも見逃すことはできないだろう。
最初は単に「性格描写を分かりやすくするアイコン」ぐらいに思っていた「獣人」の要素が、街の支配階級である人類種が彼らに根強く持っている「差別意識」の象徴として際立ってくるのは見事というほかはない。
いわゆる「ヒーローもの」に差別や偏見の問題を匂わせるということは、日本でもそのジャンルにおいて元祖的ともいえる石ノ森章太郎作品にも見られることではあるが、ウエットになりすぎずにドラマの一要素として取り込んでいるのは、極めてアメコミ的なアプローチと言える。
最新刊となる第7巻では、前巻で陰謀によって警察官の職務を解かれ、さらにDr.ネクロとも決別した究極的ピンチのアレックスが、いよいよ「キーマン」とは何であるかという核心に肉薄。
その一方で、アレックスを心から信頼する刑事のピートが犠牲に……? と、あいかわらずのドラマチックすぎる展開! 衝撃の物語から、まだまだ目が離せそうもない。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。