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【日刊マンガガイド】『セキガハラ』第3巻 長谷川哲也【総力リコメンド】

2014/08/26


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『セキガハラ』第3巻
長谷川哲也 リイド社 \619+税
(2014年8月26日発売)


この作品を一言であらわすならば、「戦国時代能力バトル」だろう。
最近はゲームにアニメにと、実在の戦国武将が超人的な能力で大暴れする作品は少なくない。そのなかでもより深く、独自のひねりをキャラクター設定に加えたのが本作。出てくるキャラクターの多くは、だれもが一度は耳にしたことのある有名武将ばかり。そのほとんどすべてが、今までの武将観を徹底的にぶち壊している。

この世界の武将たちは、「思力」という特殊能力を持つ。たとえば、主人公の石田三成(秀吉の遺志を継ぎ、理想国家を夢見る男)は、未来を見る能力を持っている。
三成に対する徳川家康は、超剛力の筋肉ダルマで、とにかく巨大。拳の一撃で人間を押しつぶす力を持ち、口癖は「筋肉!健康!」。なんでも作者の「天下を取る男は喧嘩も強いに決まってる!」という思想からのデザインであるというが、家康を描いたマンガは数あれど、こんな家康像は本作以外にないだろう。
島左近(三成の家臣)は影を自由に操ることができ、大谷吉継(越前敦賀城の城主)は、全身に巻いた包帯を自由自在に操ることができる。
吉継はロボットのようなメカニカルな顔面を持ち、包帯のなかみ(身体)は空洞。身にまとった包帯を傘のような形状にして軍場を飛び回る。もう人間なのかどうか……。ちなみに、この「全身包帯」というデザインは、重い病を患い、頭を白い頭巾で隠して暮らしていたという、吉継の史実を反映したものだろう。
ほか、虎退治で有名な加藤清正が、なんと「虎そのもの」の姿をしているなど、史実を知っているほど、ひねくった設定に戸惑う感覚を楽しめる。

本作の舞台は、豊臣秀吉亡き後の時代。史実では病に倒れた秀吉だが、なんと本作では大蜘蛛によって殺されているというのだから、もうスタート時点で、読者は度肝を抜かれてしまうだろう。
ドラゴンやゴーレムめいたものも登場し、洋装のキャラも多く、ページをめくっただけでは、とても戦国マンガには見えない。「時代劇は、人名を覚えきれないし、地味目だし……」などと、今まで敬遠していた人にもオススメだ。

普通の戦国マンガと一線を画する本作。じつは戦国マンガ最大の魅力もそなえた作品でもある。
数多くある戦国を舞台にしたエンターテイメントの魅力とは、私利私欲のためでなく、いかに「国」がよりよくなるか、思想をもって動くところだろう。本作の登場人物たちも、それぞれが己の「大義」をしっかりと持ち、それを「能力バトル」という舞台へと持ち込むのだ。

ちなみに、最新3巻での筆者のお気に入りシーンは、石抱きの拷問を受けさせながら、三成が遠い目で「悪とは、他人の苦しみに鈍感なことだ」と語るシーン。
構図を見ているだけでもワクワクするので、まずは読んでみてほしい。

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<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

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