『セキガハラ』第3巻
長谷川哲也 リイド社 \619+税
(2014年8月26日発売)
レッツパーリィ!と英語を叫びバイクに乗る伊達政宗、高速回転してビームを放つ軍師、女体化された織田信長……日本の戦国時代を舞台とした戦国モノは、エンターテイメントの激戦区だ。
大衆小説や大河ドラマなどありとあらゆる媒体で、国民的に親しまれている「戦国」ゆえに先行作品の層も分厚く、読者の見る目も厳しい。さんざん出しつくされてきた武将像を破壊し、いかに超えるか。実際の戦国時代さながらの、作品同士がやるかやられるかのジャンルだ。
その点、長谷川哲也は「長谷川哲也である」という理由だけでまったく心配ない。実際には小男だったと全世界が知ってるナポレオンを堂々たる体格にした『ナポレオン -獅子の時代-』の作家であり、石鹸切断用カッターを振り回すマッセナ団を超怖くてカッコよくした人である。
ときは関が原の戦いの2年前、傲慢で背丈豊か、胸には短筒(ピストル)、腰からサーベルを提げたイケメンが石田三成、というツカミから「いつもの長谷川哲也マンガ」だ。派手なマゲを結い、ボケた秀吉の前頭部に迷わず射撃する男前に、「数字にうるさく線の細い官僚タイプ」的な手垢のついた面影はどこにもない。
本作のスゴさは、この破天荒な三成でさえ、数多の武将のなかではキャラが薄いほうということ。老人をウェイトかわりに走りながら筋トレ、チンピラを地面に叩きつけてぶっ殺す。「筋肉!健康!」と叫ぶその男の名は徳川家康、三成が「タヌキおやじ」と呼んでる根拠がよくわからない世紀末覇王ぶりだ。加藤清正なんかは虎に食われて自分が虎になってる。退治したんじゃないんだ!