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『グランメゾンむらさきばし』第1巻 南Q太 【日刊マンガガイド】

2015/02/22


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『グランメゾンむらさきばし』第1巻
南Q太 芳文社 \819+税
(2015年2月6日発売)


 

近作『グッドナイト』がヘヴィすぎたこともあり、身がまえて読んだら、拍子抜けするほど平和でコミカルな大人の恋物語!

三鷹にあるアパート「グランメゾンむらさきばし」にある日、ひとりの美女・山吹美穂が引っ越してきた。息子と2人暮らしをするシングルファーザーの青亀は彼女に興味を抱くが――。

なんといっても魅力的なのが、「グランメゾンむらさきばし」の住人たちが織りなす、人間模様。

マイペースな青亀と典型的な小学生男子の息子、おっとり天然かと思わせて毅然とした強さももつ美魔女の美穂、典型的な世話好きおばさん&女子学生の藤井親子、料理上手なフランス人語学教師・メルセデス、陰気なようでじつは社交好きの漫画家・胡桃沢……。

偶然ひとつ屋根の下で暮らすことになった、世代も職業もキャラクターもバラバラの人々の日々の交流、そこに漂うゆるくもあたたかな空気が、なんともいえず心地よいのだ。

特に呑み会のシーンが最高。こんな楽しげなマンション、あったら住んでみたい!

そんなほのぼのタッチとはいえ、一筋縄ではいかない人間の心の機敏がちゃんと描かれているのは、さすがの南Q太。

「そろそろ彼女くらいつくったっていいんじゃない」という藤井さんの問いに、「いたらいいなって思うこともあるけど でも正直めんどくさい」と考える青亀。

 

「彼氏とかいないの?」という藤井さんの問いに、「もうそういうの必要ないでしょう 中年なんですからひとりできままにやっていきます」と答える美穂。

ひとりでいる気楽さや心地よさを知ってしまったからこそ、気になる相手ができても一歩を踏み出せないアラフォー男女の姿に、激しく共感を抱きつつ、もどかしくって応援せずにいられない!

「痛さ」が魅力の南Q太作品だが、こちらはいい意味でソフトゆえ、初心者もぜひ!



<文・井口啓子 >
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて『おんな漫遊記』連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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