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『バットマン:リル・ゴッサム』VOLUME 1 デレク・フライドルフス(作)ダスティン・グエン(作・画)/中沢俊介(訳)【日刊マンガガイド】

2015/04/12


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『バットマン:リル・ゴッサム』VOLUME 1
デレク・フライドルフス(作)ダスティン・グエン(作・画)/中沢俊介(訳)
小学館集英社プロダクション 1800円+税
(2015年2月26日発売)


アメコミ原作版の『バットマン』に対して、みなさんはどのような印象をお持ちだろうか?
クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』シリーズなどのイメージから、「アメコミ独自の劇画的な絵柄で、ダークでシリアスなストーリーもの」みたいに思っている人も多いだろう。
もちろん、バットマン関連作品は、そうした作品がメインストリームであり、大ヒットした映画版にも大きな影響を与えている。

その一方で、あまり目にすることが少ないかもしれないが、アメコミ業界においても日本のデフォルメキャラムーブメントに近い動きがあるのをご存じだろうか?
じつは、デフォルメ化したアメコミキャラクターが活躍するというコミックス自体は、80年代くらいから何度か行われており、ヒーローが子ども化or赤ちゃん化するような設定をとり入れる形で描かれていたりするのだ。
しかし、あくまで番外編的に展開するがゆえに、日本で翻訳コミックスが出版されるまでには至っていなかった。

その一方で、キャラクターの宝庫であるアメコミヒーローは、じつはデフォルメ化との相性もよく、近年ではファンシーグッズやフィギュアでもデフォルメ化されたヒーローを目にすることが多くなっているのもまた事実。

そんなカワイクなったアメコミヒーローの物語が読みたい……と思った方にオススメするのが、『バットマン:リル・ゴッサム』。
本作は、バットマンに登場するキャラクターをデフォルメ化したコミックスの最新シリーズであり、デフォルメヒーローが活躍やくするシリーズ単体としては初の翻訳コミックスである。

キャラクターの設定などは従来のバットマンシリーズに準拠しているが、ストーリーに関しては、このシリーズのオリジナルとなっているので、これまでの流れを知らなくても充分に楽しめる内容となっている。
そして、本作のストーリー部分において、重要なポイントとなるのは、「祝日」。
本作では、「ハロウィン」や「クリスマス」、「イースター」などの一大イベントとなる祝日にスポットを当て、その日にまつわるキャラクターの思いや行動が、騒動へと発展するような流れの物語が展開していくのだ。

デフォルメされ、水彩画タッチのやわらかい印象で描かれるバットマンファミリーやヴィランたちは、キャラクター性が誇張されたドタバタコメディを展開。
本来は、マッドで冷酷非情な印象のゴッサムシティに巣くうヴィランたちも、柔らかいタッチにマッチするかたちで愛すべきキャラクターとして描かれており、バットマンファミリーと敵対していながらもなんとなく「仲よくケンカ」している感じとなっているのも楽しい。

そんななかで、特に注目すべきキャラクターなのが、バットマンの相棒であるロビン。
本作に登場するロビンは、バットマンことブルース・ウェインとヴィランであるラーズ・アル・グールの娘であるタリア・アル・グールの間に生まれた、ダミアン。
彼は、4代目ロビンなのだが、ヴィランの息子ということもあって、言動がかなり乱暴。
本作ではその性格がさらに誇張されることで、さまざまな祝日でもトラブルメーカーとして大暴れするのだが、その暴走っぷりがなかなかにカワイイ。

さらにもうひとつ注目したいキャラクターは、女性ヴィランたち。
デフォルメ化されたキャットウーマン、ポイズン・アイビー、ハーレイ・クインたちは、性格や見た目の女の子らしさが強調されてとってもキュート。
作画担当のダスティン・グエンの描く愛らしい表情との相乗効果によって、ある意味ちょっと「萌え」ちゃう印象になっているのだ。

そのほか、バットマンファミリーとヴィランは総登場となり、それぞれの関係性が短いストーリーのなかでちゃんと描かれているので、本筋であるバットマンのストーリーが気になっていながらも、「キャラクターの関係や性格がわからないから手を出しにくい」と思っていた人にとって、もっとも気軽に読める入門編にもなっている。

そして、本作のキャラクターは、日本のフィギュアメーカー・コトブキヤから昔なつかしい消しゴムタイプのフィギュアとしてのリリースも決定しているので、あの独特のデフォルメが気に入ったならばコミックスと合わせてコレクションするのもオススメ。
というわけで、アメコミ初心者や女性でも、気軽にアメコミに触れることができる本作を読めば、きっとバットマンたちのキャラクターをより身近に感じることができるはずだ。



<文・石井誠>
1971年生まれ。アニメ誌、ホビー誌、アメコミ関連本で活動するフリーライター。アメコミファン歴20年。
洋泉社『アメコミ映画完全ガイド』シリーズ、ユリイカ『マーベル特集』などで執筆。翻訳アメコミを出版するヴィレッジブックスのアメリカンコミックス情報サイトにて、翻訳アメコミやアメコミ映画のレビューコラムを2年以上にわたって執筆中。

単行本情報

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