秋葉原にあるアメリカン・コミックス専門書店の、ブリスターコミックス。店内に入ると、そこに並んでいるのは、見渡すかぎりのアメコミと、アメトイフィギュア!
スパイダーマンのような誰もが知ってる人気者から、日本ではあまりなじみのないマニアックなヒーローまで、百花繚乱のアメコミキャラたちがお客さんを迎えてくれる。
ここ数年、マーベル・スタジオズの『アベンジャーズ』関連作品をはじめ、様々なアメコミ映画ラッシュ効果もあり、アメコミの知名度はここ日本でも徐々に上がりつつある。
なんと平日の夕方から、メジャー・マイナー入り混じったアメコミキャラたちが、画面狭しと大活躍するキッズアニメ『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』が堂々と放映されているほど。これは将来、日本がアメコミ大国になる日も近くない!?
そんなアメコミ旋風に乗り遅れないためにも、映画から入ったライトなファンだって原作アメコミは必読の時代なのだ!
というわけで今回は、アメコミの2大出版社「DCコミック」と「マーベル・コミックス」から刊行された作品群のなかから、「映画しか観たことないけどアメコミ気になるぜ!」というファンにすすめたい翻訳版4冊を、ブリスターコミックス店長の大橋徹二さんに紹介していただいた。
ブリスターコミックスイチオシの4冊!!
『バットマン アンソロジー』DCコミックス(編)
『バットマン アンソロジー』
DCコミックス(編) パイインターナショナル \3,800+税
(2014年11月14日発売)
ヨーロッパのアメコミ新規ファンに向けてバットマンの様々なエピソードを集めた、アンソロジー単行本の翻訳版です。
バットマンといえば、近年公開されたクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』3部作など、それぞれの監督が持つ個性が発揮された、独立した世界観が魅力ですよね。なので、ファンがアメコミにまで手を伸ばしているかというとそうでもない印象があります。
本作は、そんな新規ファンに向けて、75年という長い歴史のなかから重要なストーリー20作品をピックアップしたオムニバスです。随所に挟まれるコラムでさらにわかりやすく解説され、過去からの変遷や最近のエピソードまでまるっと分かるいいとこどりな総集編ですので、まだ映画のみで、原作『バットマン』を手にとったことのない人にはピッタリです。
そうそう、2016年公開予定の新作『バットマン v スーパーマン:ドーン・オブ・ジャスティス』は、新たなバットマンがスクリーンに登場して、あのスーパーマンと共演するという話題作ですので、映画からコミックへとファンが流れそうです。要注目ですね。
『デッドプール:スーサイド・キングス』マイク・ベンソン/アダム・グラス(作) カルロ・バルベリー/ショーン・クリスタル(画) 高木亮(訳)
『デッドプール:スーサイド・キングス』
マイク・ベンソン/アダム・グラス(作) カルロ・バルベリー/ショーン・クリスタル(画) 高木亮(訳)
小学館集英社プロダクション \2,000+税
(2014年9月26日発売)
デッドプールは、その破天荒な性格に加え、作中で「読者の存在を唯一認識している」という設定からくるメタ的な言動の数々……型破りなキャラクターとしての立ち位置が、とにかく最高なんです。
マーベルヒーローだとかアメコミだとかはもう関係なく、デッドプールというキャラクターのとてつもない魅力に惹かれているファンの方も多いです!
CAPCOMさんの格闘ゲーム『MARVEL VS CAPCOM 3 Fate of Two Worlds』や、ネット上の紹介で、「デッドプールは(読者に話しかけてくるような)ヘンテコなキャラだ」というイメージやうわさばかりが先行したまま、原典に触れられる機会がほとんどなかったのですが、ShoProさんが待望の翻訳版を刊行してくれました。
うわさに違わぬ……どころか、それ以上の大暴れを堪能できます!
余談ですが、アニメ『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』(テレビ東京)でも、アニメと原作コミックの設定の違いについて喋ったりと、デッドプールは期待どおりの大暴れを見せてくれました。今の子どもたちは、デッドプールが出るアニメがアメコミスタートラインだというのだから、いい時代だと思います(笑)。
『ホークアイ:マイ・ライフ・アズ・ア・ウェポン』マット・フラクション(作) デイビッド・アジャ/ハビエル・プリード (画)中沢俊介(訳)
『ホークアイ:マイ・ライフ・アズ・ア・ウェポン』
マット・フラクション(作) デイビッド・アジャ/ハビエル・プリード(画) 中沢俊介(訳)
小学館集英社プロダクション \2,000+税
(2014年12月8日発売)
映画『アベンジャーズ』などでジェレミー・レナー(代表作に『ハート・ロッカー』など)が演じて知名度を上げた、弓を使うヒーロー、ホークアイの日常が描かれている本作。映画で、スカーレット・ヨハンソンが演じたブラック・ウィドウらとともに、エリート・エージェントとして活躍したクールなホークアイとはまた違った姿を楽しめる1冊です。
映画とのコスチュームの違いなんかは、初めての人はびっくりすると思います。
とはいえ、コスチュームが時代とともに変化し続けるのは、アメコミならではのおもしろさなので、大いに楽しんでいただきたいなと。
先に挙げた『バットマン アンソロジー』のような予備知識がない前提で再編集されたものや、このホークアイのように第1話から新しく始まったストーリーラインは初めての方に向いてますので、そのキャラクターを好きになってしまったら覚悟を決め、続きものへと読み進めるのがよろしいかと思います。
『キャプテン・アメリカ:リボーン』エド・ブルベイカー(作) ブライアン・ヒッチ(画) 御代しおり(訳)
『キャプテン・アメリカ:リボーン』
エド・ブルベイカー(作) ブライアン・ヒッチ(画) 御代しおり(訳) ヴィレッジブックス \3,200+税
(2014年10月30日発売)
こちらは、キャプテン・アメリカが活躍する、長期にわたって出版され続けたシリーズに、一区切りをつけた作品です。
本作までのシリーズの流れを、ざっと振り返りますと……。
第二次大戦時から現代へよみがえったキャプテン・アメリカですが、ヒーローのあり方をめぐり、アイアンマンと対立。キャプテン・アメリカとアイアンマンの陣営に分かれてマーベルヒーローたちが対立する一大イベント『シビル・ウォー』が起こります。
それと並行するように、第二次大戦時の相棒が現代に復活する『キャプテン・アメリカ:ウィンター・ソルジャー』が描かれ、続いてキャプテン・アメリカであるスティーブ・ロジャースが暗殺される『デス・オブ・キャプテン・アメリカ』が展開しました。そのキャプテン・アメリカの意志を引き継ごうとする者の姿を描き、同時に死んだはずのスティーブ・ロジャースの復活を予感させたのが『キャプテン・アメリカ:ロード・トゥ・リボーン』です。
そして、スティーブ・ロジャースの復活を描く本作へと繋がる、という流れになっています。
キャラクターが死んでしまって、そのあと生き返って……という一連の流れは「アメコミあるある」としてよく言われていることですが、そこに醍醐味もあります。
いかに衝撃的に死ぬのか、そして劇的に生き返るか。マーベル・ユニバース(マーベル・コミックスの作品群に共通する世界観)におよぼす影響と、その副産物として生まれるストーリー。キャプテン・アメリカの名を継ぐのは誰か……など、本人だけではなく、まわりのキャラクターの可能性も広げていきます。まぁ、たまにそれが枷になることもありますが(笑)。
一回目はだれでも面食らうと思うのですが、まずは受け入れ、そのうえで読み進めるとだんだん気持ちよくなってきます。
2016年公開予定の映画『キャプテン・アメリカ』3作目の副題が「シビル・ウォー」になることが発表されましたが、映画には映画の世界設定(マーベル・シネマティック・ユニバース)がありますので、原作コミックと同じストーリー展開になることはないでしょう。
ただ、本作も含めた一連の『シビル・ウォー』関連作品を読んで、それでは映画ではどうなるのか……と、期待と予想に胸を膨らませるのも楽しみ方のひとつですね。
日本でも来年発売予定! かわいいキャラのゴッサムシティ
『Batman: Li'l Gotham vol.1』デレック・フリードルフ/ダスティン・グエン
『Batman : Li'l Gotham vol.1』
デレック・フリードルフ/ダスティン・グエン DCコミック \1,508(Amazon価格)
2015年に邦訳版が出る予定の、かわいいバットマンが描かれたコミックです。
アメコミも筋肉ムキムキ! 爆発! だけじゃなく、こういうスタイリッシュなのもあるよ! ということでご紹介させていただきます。
原書は人気があって、数十冊単位で入荷しても、すぐ売れちゃうんですよ。あざといかわいさかもしれませんが、かわいい系の作品が好きなお客さんの声が大きいので、うれしいですね。
映画もいいのですが、こういった作品から、肩に力を入れすぎず普通のマンガの1ジャンルとしてアメコミの世界に手を出す方が増えてくればいいなと思っています。
構成協力:山田幸彦