『地獄のリラックス温泉』第1巻
恋煩シビト 新潮社 \580+税
（2014年11月8日発売）

タイトルがすごい。「地獄」「リラックス」。どっちなんだ。
温泉を愛する30代女子BL漫画家の話。普段はがっちがちに仕事をしている。休日はすべてを忘れて、車を走らせ温泉へ。宿を取って羽を伸ばしまくる様たるや、まさに「リラックス」。

彼女は温泉めぐりをする際、特別なルールを作っている。
「一度訪れた温泉宿へ、二度訪れない」
旅行する回数は限られている。全国の温泉へ少ない休みで足を運ぶには、リピートするわけにいかない。なにより新しいお湯への魅力には勝てない。
たとえそれが、あまりにもすばらしい温泉で、おいしい食事で、宿の亭主が好みであろうと、2度は行かない。

なぜか彼女は行く先々で男性に出会う。若い給仕さんから、昭和感あふれる旅館の主人……あ、「出会った」と感じているのは彼女のほうだけか。とくに、初老のダンディズムあふれる男性には弱い様子。
湯と人との出会いは一期一会。嗚呼さようなら、愛しき湯よ。
ちょっと滑稽な、湯を愛するものだからこそ感じられるブルースが綴られている。幸せがあり、さようならがあるから「地獄」だ。

熱海、白骨、川根と、実際にある日本各地の温泉を題材にしているので、観光ガイドにもなる一冊。
地獄とリラックス、酸いと甘いの両方をしみじみ感じることが、温泉旅行最大の醍醐味だ。

＜文・たまごまご＞
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」