『シュガーダーク』
恋煩シビト 一迅社 \647+税
(2014年7月15日発売)
背徳的な艶めかしさをまとう情愛や性を描き出し、読者の心の隅に痛みや気怠さといった、ひとかけらの違和感を残してゆく、恋煩シビトの作品たち。
本作は、同人誌でも活躍を続ける人気BL作家の氏による、“3人の男の愛”をテーマにした物語だ。
奔放なハルは、「一緒にいて楽しい」から、亜希生の部屋に入り浸り。やがて亜希生にとってもかけがえのない存在になっていく。
しかしハルは、亜希生が語る“愛”とはまったく異なる“優しさ”を感じさせてくれる夏彦と出会い、魅かれてしまう。
自分にとってなにが“幸せ”なのか、悩みはじめたハルが出す答えは……。
切れ長の目や魅惑的な唇、どこか陰を感じさせる色っぽい絵。そして淡々とした進行ながらも、登場人物の複雑な感情が押し迫ってくるモノローグ。
作者の魅力全開の仕上がりとなっている。
生まれ育ちや境遇、愛や幸福の定義までまったく異なるイケメン3人が見せる、三者三様の愛情表現。
その甘くほろ苦い胸がかきむしられる思いを味わってほしい。
なお今巻は、「gateou」に掲載された3話に、描き下ろし1話を加えた表題作のほか、同人誌に掲載された雰囲気の異なる短編2作品も収録。
シビト節のファンにはもちろん、氏の作品に初めて触れる人にもオススメの1冊だ。
<文・藤咲茂(東京03製作)>
美酒佳肴、マンガ、ガンダム、日本国と陸海空自衛隊をこよなく愛し、なんとなくそれらをメシのタネにふらふらと生きる編集ライター。