『BL社長 ほぼリアルな出版業界ストーリー』
天城れの リブレ出版 \972
（2014年6月10日発売）

主に女性のために描かれる、男性同士の恋愛ファンタジー・ボーイズラブ。略称「BL」。
そんなBL作品を世に送り出す出版社の社長に、きまじめな団塊世代の男性がいきなり就任。なんとかBLを知ろうと奮闘する社長の姿を通して、謎のベールに包まれたBLマンガ編集の世界を垣間見ることができる、ユニークな半実録（？）出版業界マンガ「BL社長」シリーズの最新刊が、ついに降臨！

シリーズ第3弾となる本作では、ときにぶつかり合う営業と編集の対立、実力はあやしいのに妙に自信たっぷりな漫画家志望の社長の姪っ子、クセの強～い編集者泣かせの漫画家など、さまざまな立場の登場人物たちが登場。

作品が思うように売れないときの他部署への不満や、漫画家アシスタントの人間関係の難しさなどの描写は、かわいい絵柄に反して、かなり本格的、かつビター。だからこそ、BLマンガに関わる人たちの、仕事にかける熱意と努力（と苦労）、そしてそれぞれの仕事の「本質」が伝わってくる。BLマンガにかぎらず、出版界の内幕ものとして、マンガ好きなら楽しめる要素満載の1冊だ。
ときに、読んでいてちょっぴり胃が痛くなったりするかもしれないけど……。

＜文・川原和子＞
マンガエッセイスト。幼稚園教諭、アニメ制作会社等を経て独立。著書に『人生の大切なことはおおむね、マンガがおしえてくれた』（NTT出版）。NTT出版Webで新連載準備中。連載におすすめマンガ時評「此れ読まずにナニを読む？」（NTT出版Web内）。
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