『亞由多』第1巻
pako 幻冬舎 \630+税
(2015年3月24日発売)
なぜかだれもいない学校に暮らしているらしき「星斗(ほしと)」と「エンド―」。
なぜ彼らのいる学校にだれもいなくなってしまったのか、その理由は描かれない。
中村明日美子を思わせる、マニエリスティックな描線で綴られる、躍動的な2人の非日常的な日常が楽しい。
これといった理由もなく、昆虫図鑑に載っていた「ツノゼミ」を探すために学校を出た2人を待ちかまえていたのは、ホラー映画やSF映画のようなちょっと変な世界。
そこでは時間は停滞し、のんびりとした空気が漂う。
だれも世界の荒廃の理由を探そうとはしないし、懸命にサバイブしようともしない(生きるために謎の何者かと戦ったりはするけど)。
元気に走りまわり、ふざけあう2人の姿は、夏休みの子どもたちのようで読んでいて楽しい。
あきらかにディストピアが描かれているのに、切迫感がないのがおもしろい。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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