『岸辺露伴は動かない』
荒木飛呂彦 集英社 \419+税
5月13日は「メイストームデー」。
……と言われても「なにそれ?」という人のほうがおそらく多いことでしょう。
むしろ、この日が一般に定着していないのはむしろよきこと。どういう日なのかといえば、「別れ話を切り出すのに最適な日」だそうで……。
で、どうして5月13日なのかといえば、「♪夏も近づく八十八夜」のフレーズが有名な『茶摘み』の歌のもとになった「八十八夜の別れ霜」ということわざがあるのですが、それにちなんで「バレンタインデーから88日後だから」だそうです。
……と、いくら説明したところで、まったく納得していない表情のみなさんが目に浮かぶような気がするし、書いている自分も納得できてませんのでお許しを! これほど納得できない記念日ってあるんでしょうか??
納得できないついでに書いておくと、茶摘みの方の八十八夜は「立春から88日目」であって、「88日後」だと1日違ってますから! うるう年だと2日もズレることに!!
……なんだか、いろんなところが間違ってる気がしてならない記念日です。
そもそも「今日はメイストームデーだから」って理由で本当に別れ話を切り出す人がいたとしたら、逆にこっちから別れたくなるような気もうっすら……。何がカンに障るって、「なるべく別れ話を穏便にすまそう」的な根性がすけて見えているという部分。
もちろん、結果的にお互い納得して別れることも恋愛ではあるにせよ、「自分は傷つきたくない」という保身的な態度は、まったくもっていただけません。
そんなわけで、本日は「別れ話ナメんな!」という思いを込めて『岸辺露伴は動かない』に収録されている『六壁坂』のエピソードをピックアップ。
「このマンWEB」ではエイプリルフールのネタにもされている岸辺露伴先生。
彼のことはみなさんご存じという前提で話を進めますが、マンガの取材のはずが様々な怪異に遭遇してしまうのがこの短編集。
『六壁坂』で描かれるのは、「お金で解決」というヘタな別れ話を切り出したばかりに「妖怪六壁坂」に取り憑かれてしまう令嬢の物語。
この妖怪、ささいなことで相手の前で死んでしまうのだが、本領発揮はむしろそのあと。
死んだはずなのに血液の流出が永遠に止まらないため、殺した側は自分の身の破滅を防ぐためにその妖怪の世話を続けなくてはいけなくなるのである。そのため、彼女は別の男性と結婚をしたあとも、ひそかに殺した(はずの)男の世話を続けることに……。
とまぁ、彼女のように一生妖怪の世話をするハメになる人はなかなかいないと思いますが、別れ話を簡単にすまそうとしたばかりに、かえってとんでもない目に遭ってしまった人は少なからずいるんじゃないかしら?
もし別れ話を切り出すときが来たら、それなりにまじめに向き合ってからにしましょうね!
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。