日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ニュクスの角灯』
『ニュクスの角灯(ランタン)』第1巻
高浜寛 リイド社 ¥997+税
(2016年1月29日発売)
作品の多くがフランス語訳されており、海外のマンガ読みからも高い評価を受けている高浜寛。
これまでどちらかというと人生の悲哀を感じさせる作風を持ち味としてきた作家だが、本作は新境地といえるかも。
1878年(明治11年)の長崎。主人公の美世は不器用で家事もできなければ学もなく、愛想もない。
しかし、彼女には人並みはずれた能力がひとつ。じつはものに触れただけで、その持ち主の過去や未来がわかるという神通力を持っているのだ……。
その能力を見こまれて、美世が務めることになったのは異国の品々が所狭しと並ぶ骨董屋。
パリ万博に湧くフランスから店主・モモさんこと小浦百年(こうら・ももとし)が仕入れてきたのは、見たこともないような珍しいものばかりだ。
ミシン、ヒップの部分をふくらませたバッスルスタイルのドレス、蓄音機……。ちなみにこれら、登場する「舶来品」について、各話のラストに著者のうんちくが挟まれているのも楽しい。
少々変わり者だが、世の中を見る目同様に心の広い店主が、美世を新しい世界へとやさしく導くさまに心打たれる。
モモさんが美世にアルファベットを教えながら、まだ読めるはずもない『不思議の国のアリス』(洋書)を渡すのは、この日々を本当の意味で自分のものにするきっかけをも与えようとしているからなのだ。
一片の自信もなかった少女が能力を活かしながら店になくてはならない存在となっていき……その瞳はどんどん輝きを増していく!
これから明かされていくであろうモモさんのバックグラウンドも気になるところだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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