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『お客様は神様です。』第1巻 メイジメロウ 【日刊マンガガイド】

2016/01/13


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『お客様は神様です。』


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『お客様は神様です。』第1巻
メイジメロウ 講談社 ¥600+税
(2015年12月9日発売)


アルバイトで接客をしている時に客に理不尽な要求をされた、会計で並んでいる時に大声でクレームをつけている客を目撃したといった経験は、一度はあるのではないだろうか。
そうでなくとも、SNSで店員がみずから公開し拡散した“粗相”画像などを目にする機会も現代では格段に多い。
「お客様は神様」の言葉が曲解され、客の都合のいいものとして扱われている風潮を逆手にとった、接客ギャグマンガが『お客様は神様です。』だ。

コンビニのネコマーケット 威張鬼(いばらき)店で働く店員・白塚佑司(しらつか・ゆうし)は、様々な厄介な客の対応でストレスフルな日々を送っていた。
ある日やってきた、新人バイトの朱羅々(しゅらら)は客に何をされても常に笑顔、サービス業で働く者の鑑のような対応。じつは彼女は、親(酒呑童子)の借金(人間界で遊び呆けた金)を返済するため人間界でバイトをしている鬼神なのだった。

レジ前でいばり散らし金をせしめようとする客、店の前にたむろってはゴミを散らかしていく客、店員につきまとうストーカー客などバラエティ豊富なモンスター客が描かれるが、それに対応するのは鬼神。
いったいどんな対応をするのだろうか──。

朱羅々は鬼神ながら、人間が大好きで人間と接することができる接客業に憧れていたという。
そのためどんな荒ぶるお客様も「何日でも何ヶ月でも何年でも何百年でも」、心からの笑顔で帰ってもらうためには誠心誠意尽くす。
小柄でニコニコ笑顔の彼女をなめきっていた客は、その怨念ともいえる接客におののくことになる。

バイトにかかわらず、働くうえで顧客による理不尽な思いをしたことがある人なら、このやりとりは痛快に痛快に思えるはず。
一方で、こうしたモンスター客をうまくやりこめるには、人間離れした接客が必要なのだと皮肉めいた気持ちにも。

もはや人間には彼らの接客は難しく、古代の鬼を連れてくるしかない!?



<文・川俣綾加>
フリーライター、福岡出身。
デザイン・マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブや、「マンガナイト」などで活動中。
著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』(岡田モフリシャス名義)。
ブログ「自分です。」

単行本情報

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