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『東京BONごはん ~おウチで作る名店の味~』 入江喜和 【日刊マンガガイド】

2016/05/16


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『東京BONごはん~おウチで作る名店の味~』


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『東京BONごはん ~おウチで作る名店の味~』
入江喜和 幻冬舎 ¥556+税
(2016年4月18日発売)


また、このテの食マンガか! と毒づきたくなった人も、著者があの『たそがれたかこ』の入江喜和……といえば、食指が動くはず。

高給取りで食べる専門の妻・こまこさんとイラストレーター主夫で料理上手の夫・いさくさん夫婦が毎回、東京の実在の店を訪ね、さらにその味を自宅で再現するという趣向の本作。

登場するごはんは、日本橋「たいめいけん」のオムライス、COREDO室町2「日本橋だし場 はなれ」のだし炊き込みごはん、京橋「都鳥」の鳥わさ、築地「虎杖 裏店」のカレーうどん、、両国「ちゃんこ川崎」のつくね&つくねバーグ……などなど、入江先生らしいというか。
夫婦が日本橋に引っ越してきたという設定もあり、やや渋好みのラインナップ。

おいしいもの大好きで「大好きー! 楽しいー! うれしいー!」と、てらいなく感情を表現するこまこさん。
無骨で繊細で心優しいいさくさん。
対照的な2人のキャラクターもほのぼのと愛らしく、ストレートに食欲をくすぐるタイプの料理が少ないため、飯テロ度は低く、「おウチで作る名店の味」という触れこみのわりには、レシピもいたって平凡だが、食を通じて描かれる互いへのあたたかな思い、行間に漂う出汁のごとき味わいにほっこりいやされる。

外食(=自分以外のつくった貴重なごはん!)を楽しみながらも、ついつい、コレを家でつくるなら……と妄想してしまう、いさくさんには食いしん坊&料理好きなら、共感せずにいられない!
同性から見ても思わず頬がゆるむ、こまこさんの愛されキャラもすばらしく、ダンナにゴハンをつくってもらうためには、彼女のようなリアクションが必要なのね……と、わが身を反省したり!?

巻末のショートエッセイも、入江先生こんなアテで呑んでるんだ~とか、新井英樹先生は普段こんなごはん食べてるんだ……といった漫画家夫婦の食卓事情がうかがえて楽しい。

お次はぜひ、こっちサイドをふくらませた食マンガを希望!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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