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【日刊マンガガイド】『アオイホノオ』第12巻 島本和彦

2014/07/23


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『アオイホノオ』第12巻
島本和彦 小学館 \552+税
(2014年7月11日発売)


「アニメ化はいいがドラマ化は……だいたい原作どおりにならない!」

12巻のオビになってるこのセリフは、昨年の「ゲッサン」6月号に掲載されたものだが、その頃にドラマ化が決まってたのか!? それとも逆に、このセリフがドラマ化のきっかけとなったのか。
フィクションとリアルのきわどい境界線が『アオイホノオ』のたまらない魅力だ。

漫画家をめざす島本、もとい焔モユルは焦りまくる。
同年代の庵野ヒデアキたちが制作した4分のショートアニメを楽しむどころではなく、敗北感に打ちひしがれる。「素手の人間がなんの理由もなくメカと戦いたたきつぶす」シチュエーションを先にやられたから。
目の前にごっそり積んであったお宝が持っていかれてしまった!

ウケてる芸大生達に「お前らは……客かっ!」と憤るホノオの内面はすでにプロだ。
『うる星やつら』のテレビアニメ化をファンとしてうれしい以上に、自分がロープを張る前の開拓地を奪われてしまうかもしれない……だから「描かざるをえない」という気持ちを持てたものだけが、プロの戦場に立てるのだ。

焔の焦りを描くには“敵”なり“目標”を目に見える絵にしなければならない。
まぁ、そんなわけで車田正美氏の『リングにかけろ』が出版社の壁を超えて引用されたり、ゴ○ラやイ○オンやどこかで見たキャラが大暴れする第20回SF大会(通称DAICON3)オープニングが、フィルムブックばりに収録される!

プロデビューに立ちはだかる新人コミック大賞の選考で「ボツ!」とゴミ箱に投げ捨てる編集者……というシーンを「この妄想ネームはボツにしてやろうかと思いましたがエンタメとしてはおもしろいので通しました」と欄外でぼやきながらOK出した、リアル編集者の男前さにも惚れます。

DAICON3アニメがコマごとにどこがすごいかの解説や、見開き×2を割いた「金田伊功動きするラムちゃん」も、アニメオタク的に必見!



<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。

単行本情報

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