日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『はじめましてさようなら』

『はじめましてさようなら』 第1巻
六多いくみ 講談社 ￥429+税
（2016年7月13日発売）

葬儀屋といえば、映画『おくりびと』のヒットでスポットが当たった職業だが、その細かな実情は一般にはまだまだ知る機会は少ないもの。そういった意味でも貴重なマンガがこちら。

日向珠子は、突然休学した片想いの相手・岸川くんを追って実家まで押しかけたところ、彼は父親の急逝により、実家の葬儀社を継ぐことになったと知る。
ひょんなことから葬儀を手伝うことになった珠子は、ここは亡くなった人とこれから生きていく人の人生が交差する場所であることに気づく――。

よく「お葬式は人生の縮図」といわれるように、葬儀の場にあるのは、悲しみや慈しみの気持ちだけでは決してない。死をきっかけに噴出する、肉親間ゆえの怒りや憎しみ、遺産相続にまつわる醜い争いに戸惑いながらも、故人のために、これから生きていく人のために何ができるのか考え、奮闘する珠子。

登場人物の背景や心理描写がいまいち浅いため、ストーリー的にもご都合主義に感じられる箇所もあるが、葬儀屋の仕事は不規則で夜も遅いため、晩ごはんはたいていお弁当――なんてエピソードはリアルで興味深く、そこに珠子と岸川くんの恋がどう絡んでいくかも気になるところだ。

＜文・井口啓子＞
ライター。月刊「ミーツリージョナル」（京阪神エルマガジン社）にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」（DU BOOKS）寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69