365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
8月15日は終戦記念日。本日読むべきマンガは……。
『あれよ星屑』第1巻
山田参助 KADOKAWA ¥640+税
昭和20年8月15日の正午。昭和天皇による玉音放送をもって太平洋戦争における日本の敗北が国民に伝えられた。
日本政府が(日本軍の無条件降伏を要求した)ポツダム宣言の受諾を連合国各国に通告したのは前日の8月14日だが、日本では8月15日を終戦の日、「終戦記念日」と称している。
あれから71年の月日が流れた。日々、戦争の記憶は風化している。
とはいえ、たかだか71年である。今年は現職の米国大統領であるオバマが広島を訪れ、スピーチするという歴史的な出来事があった。
我々は昭和20年8月15日と地続きの世界で生きていることを認識しなければいけない。
そんな終戦記念日に読んでほしい作品が『あれよ星屑』だ。
太平洋戦争終結後、かつて死線をともにした2人の男が焦土の東京で再会し、戦争の記憶に苛まれながらも必死に生きぬく姿を描いて人気を博し、『このマンガがすごい!2015』のオトコ編ランキングで第5位を獲得した。
じつはこのランクインは事件だった。山田参助といえば、ガチムチ男子が恥じらう唯一無二の世界観でゲイ雑誌を主戦場に活躍する鬼才だったからだ。
その山田が満を持して一般青年誌である「コミックビーム」に参戦し、その才能をいかんなく発揮。いきなりスマッシュヒットをかっ飛ばした。
古くからのファン(主に組合の方々)にとってみれば、痛快だったに違いない。
上記にアップした第1巻の表紙をご覧いただきたい。
靖国神社の前に立っているのが主人公の黒田門松(左)と川島徳太郎(右)だ。
物語は復員してきた黒田が浦賀から東京へ向かう汽車の中で荷物を盗まれ無一文となり、空腹に耐えかねて闇市で無銭飲食を行うシーンから始まる。
ここで地回りのヤクザと乱闘になるが、そこに現れたのが元上官の川島。川島こそが、その店の経営者だったのだ。
以降、男子2人の友情を主軸に、焼け野原となった首都でたくましく生きる人々をエネルギッシュに描きつつ、彼らにしみついている死の匂いも真正面からとらえていく。
風景から衣食住までしっかりとした歴史考察のうえで終戦直後が再現されているのもすばらしい。
読み口は決して重くないので、未読の方もぜひご一読を。
紙面から漂う焦げた匂いに、むせ返るような感覚に陥り、終戦直後の東京にトリップできますよ。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。今秋公開予定の内村光良監督『金メダル男』の劇場用プログラムに参加しております。