日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ハルチカ』
『ハルチカ』 第2巻
初野晴(作) ぶーた(画) なまにくATK(キャラクター原案) KADOKAWA ¥580+税
(2016年11月26日発売)
初野晴の人気学園ミステリ〈ハルチカシリーズ〉のコミカライズ作品。 2016年1月にTVアニメ化され、佐藤勝利(Sexy Zone)と橋本環奈の主演の実写映画『ハルチカ』も2017年3月4日に公開される、今話題の作品である。
高校1年生の穂村千春(チカ)と、その同級生の上条春太(ハル)が入部したのは廃部寸前の弱小吹奏楽部。
2人は、指導教師の草壁信二郎を、吹奏楽の甲子園にあたる「普門館」の舞台に立たせたいと、練習に部員集めにと奮闘する。〈ハルチカシリーズ〉は、高校生活の楽しさを描いた学園ものの側面と、主人公2人のまわりで起こる「事件」の謎解きのおもしろさが融合した学園ミステリの秀作なのである。
2人が遭遇するのは、「6面とも真っ白なルービックキューブを完成させられるか?」「吹奏楽部VS演劇部の即興劇対決で、いかにして勝利をおさめるか?」「部室からなくなった劇薬の硫酸銅を、文化祭開催までに発見できるか?」といった頭を抱える謎である。
そうした難題を解決するうちに、吹奏楽部のメンバーが徐々に集まってくる。作中時間の進行にあわせて、2人は高校1年生から2年へと進級していくのだが、それとともに部員が充実してきた吹奏楽部も「普門館」へと近づいていくのである。
〈ハルチカシリーズ〉の原作は、2016年12月現在で、『退出ゲーム』、『初恋ソムリエ』、『空想オルガン』、『千年ジュリエット』、『惑星カロン』の5冊が刊行されている。
本作で〈ハルチカシリーズ〉に興味を持たれた方は、ぜひ手を伸ばしてほしい(『退出ゲーム』~『千年ジュリエット』は文庫版なので入手しやすいと思う)。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。現在発売中の「ミステリマガジン」2017年1月号(早川書房)に、2016年のミステリコミックの総括を執筆。また、同誌のコミック評では、池田邦彦『グランドステーション ~上野駅鉄道公安室日常~』を紹介しています。