日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『恋と問』
『恋と問』 第1巻
羽生生 純 KADOKAWA ¥800+税
(2016年12月24日発売)
自称「漫画芸術家」男とコスプレイヤーOLの不器用な愛とぬぐいがたい自我のせめぎあいを泥臭くもパワフルな独特の画風で描き、大きな反響を巻き起こした『恋の門』完結から14年、まさかの続編が開幕した。
「漫画を生きる女」恋糸と「レンタル彼氏」問は、偶然出会い、互いに理解不可能なものを感じながらも、強烈に惹かれあう。
恋糸の母と問の父がじつは……という展開は、予定調和とはいえ、前作『恋の門』の読者ならば、やはり興奮を禁じえない!
「“誰でもできる簡単なお仕事”の“誰でも”なくせに
自分らしさなんか出してんじゃねーよ!」
「こういうありがちな「母と娘の確執」みたいな展開ウンザリ」
「これが有名な「若さ」ってやつね。」
「もうなにかをつくるのやめたの?」
「あんたねえ、何度も言うけど人生は漫画じゃないのよ?」
などなど、著者の心の叫びとおぼしきセリフ。
「私が描けばなんでも漫画になる」と妄信し、つかみどころのない問に当惑しながらも「このキャラ使える!」、「あえてこのまま問くんと突き進んだとしたら、私の漫画が最高のドラマになる!」と盛り上がる恋糸を筆頭に、予測不可能な登場人物の言動も、私たちの不様な現実そのままにリアルで、心えぐられっぱなし。
刹那的な好奇心や欲望につき動かされる、業深き4人をはたしてどんな運命が待ち受けているのか? 最後まで見届けるべし!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69