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『カツシン さみしがりやの天才』第1巻 吉本浩二 【日刊マンガガイド】

2014/09/24


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『カツシン さみしがりやの天才』第1巻
吉本浩二 新潮社 \580+税
(2014年9月9日発売)


「このマンガがすごい!2012」オトコ編第1位を獲得した『ブラック・ジャック創作秘話 ~手塚治虫の仕事場から~』(原作:宮崎克)、そして『さんてつ』により、ノンフィクション漫画家としての才能を開花させた吉本浩二が満を持して描くのは、俳優・勝新太郎。

『座頭市』シリーズで大ブレイクした勝新こと勝新太郎は、自他ともに認める映画狂で、脚本・監督・プロデュースも務めた人物だ。
また、酒豪で遊び好きで、ピンチの局面でさえサービス精神旺盛で……伝説的なエピソードには事欠かない映画界の風雲児だけに、いかに“その真実”が描かれていくのか楽しみである。

『ブラック・ジャック創作秘話』同様に、勝新と出会ったさまざまな人々に取材しながらその像を浮かびあがらせていくスタイルで、一話一話、期待を裏切らない熱さと密度。
常人には計り知れないほどの映画に賭けた想い、勝新の凄さや人間的魅力が伝わってくるのは、作者が証言者の一人ひとりの感情を映し出しているからにほかならない。

第1巻には妻・中村玉緒をはじめ、篠山紀信、原田美枝子らが登場。そして最も驚いたのは、ピカソをして「20世紀最後の巨匠」と言わしめた画家・バルテュスが勝新の大ファンだったこと。
バルテュスたっての願いで親交が実現し、言葉の壁を越えて通じ合った2人の男たちの、まるで初恋がかなった少女のような目線が愛おしく、心を揺さぶられる。

勝新ファンにも、これまで勝新を知らなかった人にもオススメの、長く続いてほしい作品である。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ド少女文庫

単行本情報

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