日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『正解するカド』
『正解するカド』 第1巻
奥橋睦(著) 野崎まど(アニメ脚本) 東映アニメーション(作) 講談社 ¥680+税
(2017年6月23日発売)
羽田空港上空に突如出現した一辺2キロの立方体。
その後「カド」と呼称される、謎の立方体に1機の旅客機が呑まれてしまった。
その正体を探るべく調査が試みられたが、「カド」は戦車の徹甲弾すら跳ねかえし、人類の科学技術では対応が不可能なものだと判定された。
「カド」に呑まれた旅客機には、外務省の国連政策課の首席事務官・真道幸路朗が乗りあわせていた。
真道は、外務省内でも凄腕のネゴシエーターであったが、はからずも「異方」より訪れたヤハクィザシュニナと交渉を行うこととなった。
今年の4月から6月にかけて放送されたTVアニメ『正解するカド』をマンガ化したのが本作である。
『正解するカド』は、現在注目の作家・野﨑まどがオリジナル脚本を務めたことでも話題となったが、この作品は、SFの代表的なテーマである「ファースト・コンタクト」を取り扱ったものである。
「ファースト・コンタクト」とは何か?
アニメの放送開始とタイミングを合わせて刊行された、同テーマのアンソロジー『誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選』(ハヤカワ文庫JA)の「まえがき」に記された大森望の文章がわかりやすいので引用しておこう。
「もし人類が、高度な知性を発達させた地球外知性と出会ったら、そのときいったいなにが起きるのか? (中略) いや、そもそも同じ人類のあいだでさえ意思疎通がままならないのに、異質な知性とのあいだにコミュニケーションが成立するのか?」
このテーマにのっとって、SF小説(『幼年期の終わり』等)にかぎらず、映画(『未知との遭遇』等)、マンガ(『うる星やつら』等)、アニメ(『学園戦記ムリョウ』等)などあまたの作品がつくられてきたわけだが、本作はそうした系譜に連なる作品なのである。
地球外知性であるヤハクィザシュニナが口にする「世界を推進する」という言葉の意味は?
ヤハクィザシュニナから、無限にエネルギーを供給する「ワム」を提供された日本政府の決断は?
そして、真道は高度な知性を持つヤハクィザシュニナと、どのように交渉を展開するのか?
本年末刊行予定の第2巻が待ち遠しいところである。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。「2017本格ミステリ・ベスト10」(原書房)でミステリコミックの年間レビューを担当。