365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
8月15日は終戦記念日。本日読むべきマンガは……。
『あとかたの街』 第1巻
おざわゆき 講談社 ¥580+税
8月15日――本日は決して忘れてはいけない「終戦記念日」だ。人類史上最大の戦争である第二次世界大戦が終結したのは、昭和20年の同日。当時のことは今もなお語り継がれており、同じあやまちを繰り返してはいけない、という戒めになっている。
そんな第二次世界大戦をテーマにしたマンガは多数存在する。戦争に立ち向かう日本兵や残された家族の姿を描いた作品は、どれも胸を打つだろう。
そんななか、ひとりの少女の目線から戦争を切り取った作品がある。それが『あとかたの街』だ。
本作は主人公である少女・あいのささやかな日常から幕を開ける。
名古屋に住むあいにとっては、戦争なんて遠い場所で起こっているようなもの。自分たちがそれに巻きこまれているなんて微塵も感じていないのだ。
想像を絶するような状況下でも、あいの日常は普通の女の子のそれと変わりない。女学校に進んだ同級生に劣等感を覚えたり、鶏鍋が食べられることに大喜びしたり。異常な時代においても、日々の些細なことで一喜一憂するのだ。
だからこそ、巻数が進みはっきりと描かれる戦争描写とのギャップに愕然としてしまう。あいの日常がこのままゆるやかに続いていってほしい。そんな読者のあわい希望を打ち砕くのだ。
そして、そのギャップは、まさに当時の日本国民だれもが思っていたことなのだろう。
戦争なんて自分には関係ない。
それは間違いだ。火の手が目前に迫った時、残酷な現実に打ちのめされ、初めて「死」を意識する。そうなってからでは遅いのだ。
名古屋大空襲であいはどうなってしまうのか。それを読むだけでも本作には価値があるだろう。
そして、あらためてこう思う。二度と戦争を起こしてはいけないと。
<文・五十嵐 大>
83年生まれの、引きこもり系フリーライター。デスゲーム系やバトルもの、胸キュン必至の恋愛マンガやBLまで嗜む、マンガ好きです。マイブームは、マンガ飯の再現。