365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
8月28日はバイオリンの日。本日読むべきマンガは……。
『G線上のあなたと私』
いくえみ綾 集英社 ¥419+税
明治13年(1880年)8月28日、深川の楽器職人・松永定次郎が国産バイオリン第1号を完成させた。当時31歳の松永は「三味線に似た音色のよい楽器」の噂を聞きつけ、あちこち探してようやく神田駿河台のニコライ堂(大聖堂)にあった提琴(バイオリン)を見せてもらい、見よう見まねで製造したそうだ。
てなわけで本日はバイオリンの日。もちろん日本限定の記念日である。
そこで「きょうのマンガ」はバイオリンを軸にした群像劇『G線上のあなたと私』をピックアップしよう。
寿退社当日に婚約者から「なかった事にして下さい」と頭を下げられた小暮也映子(こぐれ・やえこ)・25歳は、傷心のままCDショップへ立ち寄る。やけくそで酷い失恋ソングでも聴いてやろうと思ったからだ。ところが彼女の目に留まったのは店内のモニターに流れていたDVD。「G線上のアリア」が印象的に流れる、あの国民的アニメだ(固有名詞が出ていないので推測です)。
ちぎっては投げ、ちぎっては投げるア○カのごとく、相手のことを「フツボッコにしてやればよかった」と涙を流す也映子は、G線を弾けるようになるべくバイオリン教室に通い始める。そこで出会ったのが41歳の主婦・北河幸恵(きたがわ・ゆきえ)と、19歳の大学生・加瀬理人(かせ・りひと)。彼らを教えてくれるのは、ゆるふわ美人の26歳、久住眞於(くずみ・まお)先生。
年齢も出自もバラバラな生徒3人が凸凹した友情を築いていくことにくわえ、何やらワケアリの理人と眞於の関係を軸に物語は進行。3人それぞれのバックボーンを挿入しながら、徐々に全員が距離を詰めていき、微妙に関係性が変化していくさまが丁寧に描かれる。そのデリケートな空気感を読者に伝達させる巧の技には脱帽しきりだ。
バイオリンメインの設定ではないにしても、そこをないがしろにしているわけではないことも強調しておきたい。いくえみ綾自身が「大人のバイオリン教室」に通っており、“思った以上に楽しく、思った以上に難しい”バイオリンの魅力を十二分に伝えてくれる。
せっかくなので「G線上のアリア」をかけながら、初心者歓迎の“大人のバイオリンマンガ”を、じっくりとご視聴あれ!
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。