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『このマンガがすごい! comics スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』 第1巻 友井羊(作) 見崎夕(画) 【日刊マンガガイド】

2017/11/11


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『このマンガがすごい! comics スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』



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『このマンガがすごい! comics スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』 第1巻
友井羊(作) 見崎夕(画) 宝島社 ¥640+税
(2017年11月10日発売)


午前7時前。フリーペーパー編集者の奥谷理恵(おくたに・りえ)は、たまたま見つけたスープ屋「しずく」というお店で、物腰の柔らかい店長・麻野暁(あさの・あきら)と、彼がつくるおいしいスープ料理に出会う。それ以来、お店にたびたび通うようになった理恵だが、麻野は理恵が“ある悩み”を抱えていることに、気づいていた――。

「スープ屋」というだけでかなり珍しいのに、ランチでもディナーでもなく「朝ごはん」の話。
本作は、様々な人々が日常的に遭遇する問題を、スープ屋「しずく」の店主・麻野が丁寧に解いていくオムニバス作品だ。
推理作品としても楽しめるが、マンガでは人間ドラマとしての色味がより濃くなった。麻野の立ち位置は、人々が悩みを解決してとおりすぎるための、交差点の信号のようなものだろう。

「どんな複雑な味のスープにも必ずレシピが存在するように 
どんな結果にも必ず理由が存在します」
麻野は理論だてて料理をつくるスタイルの人間で、きちんとした知識と経験でスープをつくる。
どんな複雑な味のスープにもレシピが存在するように、人の苦しみや悩みも紐解いていけば分析できる、という思考だ。

朝食が話の軸であることが、この作品のキモ。
まず朝の時間は、客がいない。奥谷のようななじみのお客さんと麻野だけの時間が成立する。麻野が仕込みをしている時の静謐さは、本音が出る貴重な会話の時間だ。
朝は急いでいると抜きがち。しかし朝食は、1日元気に動くためのエネルギーとしてとても重要。
「ジャガ芋とクレソンのポタージュ」「ソーセージのポテ」「オニオングラタンスープ」「ロードアイランド風クラムチャウダー」など、健康によさそうな手のこんだスープが1皿出てきたら、目も覚めるというもの。
朝食は絶対食べないと死んじゃう、というものではない。けれども、食べれば元気になれる。心に余裕ができる。
お客さんが笑顔になるための、朝食のようなエネルギーに、麻野はなろうとしているのだ。

もっとも麻野は探偵ではない。
お客さんにおいしく食べてもらいたい、元気になってほしいだけだ。そのために、相手の心に踏みこみすぎないように注意しながら、できるかぎり悩みに寄り添い、謎を解決しようと努力する。
彼のおもてなしを受けるたびに、女性たちが惹かれてしまうのもよくわかる。
でも第1巻では、麻野の素性こそが一番の謎。事件の推理のみならず、奥谷が彼の本心に近づけるのかも、今後気になるところだ。


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<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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