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『輪るピングドラム』第1巻 イクニチャウダー(作)柴田五十鈴(画)星野リリィ(イラスト原案)【日刊マンガガイド】

2014/10/12


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『輪るピングドラム』第1巻
イクニチャウダー(作)柴田五十鈴(画)星野リリィ(イラスト原案) 幻冬舎 \630+税
(2014年9月24日発売)


2011年に放映されたアニメ『輪るピングドラム』のコミカライズ作品。根強いファンを持ちながらも、「難解」「意味不明」「納得いかない」という評価もされてきた問題作のストーリーをそのままに、マンガとして読みやすく情報が整理されている。
アニメはよくわからなかったという人にも、アニメのファンだという人にもオススメできる内容。小説版も非常に高く評価されているだけに、コミカライズ版も期待を裏切らないクオリティだと言えるだろう。

冠葉と晶馬と陽毬たち3兄妹は、平和な日々を送ろうとしていたが、陽毬が病で命を落としてしまう。衝撃を受ける冠葉と晶馬たちだったが、陽毬はなぜか蘇り、兄弟に「ピングドラムを手に入れろ」と謎の指令をくだす。
兄弟は「ピングドラム」を探すために、苹果というストーカー少女と出会い交流を持つ。苹果はただのストーカーではなく、その背景には死んだ姉、崩壊した家庭があった。また陽毬たちの「家族」の問題も徐々に明らかになって……。

と、あらすじだけを書き出そうとしても、これだけ複雑な内容。アニメで鑑賞しようとすれば全24話、1話30分だとして合計12時間観つづけなければならず、かつ「一度観ただけではわからない」とも言われているので、愚直に2周する必要があるのだとしたら、丸1日24時間をこの作品に捧げる必要が出てくる。
「その価値がある」とファンは言うかもしれないが、先にマンガ版や小説版を自分の速度で読んで、まず骨子を踏まえてから、圧倒的なディテールにあふれるアニメ版に挑むと、より味わいが深まってよいかもしれない。

逆に、すでにアニメ版のファンになっている人ならば、マンガ版における時系列の処理の仕方の違いや、アニメ版からマンガ版でおこなわれている省略について、「なるほど、あそこをこうしたのか」と楽しむことができる。
マンガを読むのにあわせて、アニメを観なおすこともオススメしたい。



<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
Twitter:@nnnnnnnnnnn

単行本情報

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