日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ブレンド・S』
『ブレンド・S』第4巻
中山幸 芳文社 ¥819+税
(2017年10月27日発売)
「きらら」レーベルといえば、かわいらしい女の子キャラクターたちのなにげない日常が中心となる作品が思い浮かべられやすい。
そんななかで、2017年11月現在TVアニメも絶賛放映中の『ブレンド・S』は、そこに男女のラブコメ成分までブレンドした、ちょっと変わったポジションにある作品のひとつだ。
ブレンドされているのはそれだけではない。そもそも『ブレンド・S』というタイトル自体が、喫茶店という舞台設定から連想される「ブレンドS」という定番のオーダー名や、「ドS」という語の響きにかかっていることはもちろんのこと、ヒロインたちがみな、「素の状態」と、スティーレ(Stile)内での「演じられた属性」(SadisticだったりSisterだったり)とをブレンドした魅力を備えていることにもかかっているだろう。
そのうえさらに、どのヒロインにもギャップが混ぜあわせてある点も見逃せない。というのも、ヒロインごとに素と接客時でキャラクター性が二重化しているおかげで、そこと見た目とのあいだのギャップが――たとえば夏帆であれば、演じる属性がツンデレであるが、実際は明るく優しい性格、さらにゲーマーである、というように――、よりいっそう複雑化しているのだ。
もちろん『ブレンド・S』は、キャラクターたちのかわいらしいかけあいや、オタクあるあるネタまで含めた多彩なギャグが大きな魅力の作品ではあるが、同時に一見したところのライトでコミカルな作風に比して、読み味のコクは深い。
特にこの第4巻からは、ディーノと苺香のラブコメ展開が加速することで、また新しい味わいが楽しめるはずだ。
<文・高瀬司>
批評ZINE『Merca』主宰。アニメ・マンガ・イラスト関連を中心に編集・執筆。
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