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『帝一の國』第10巻 古屋兎丸 【日刊マンガガイド】

2014/12/22


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『帝一の國』第10巻
古屋兎丸 集英社 \476+税
(2014年12月4日発売)


真剣だからこそ滑稽で、滑稽なまでに真剣にやっているからこそ胸を打つ……。それは主人公・帝一にも、『帝一の國』という作品自体にも言えること。

本作は、名門私立男子校・海帝高校に通う赤羽帝一が、“生徒会長”を目指してひたすら邁進するという物語だ。
「たかだか高校の生徒会長でしょ?」なんて侮ってはいけない。海帝高校は全国に名を轟かすトップレベルの学校で、多くの政治家を輩出している中高一貫の超名門校。そこで生徒会長になった者は、日本一の国立大学・東都大学へ進むことが約束されるだけでなく、政界入りしたその時には、「海帝生徒会会長会」という最大派閥に入ることができるのだ。

帝一は学校のトップである生徒会長となり、ゆくゆくは国のトップである総理大臣になるという野望を持って、目的のため奮闘する。さまざまな派閥とライバルたちの存在があるなかで、時に真っ直ぐに情熱をぶつけ、時にクールに策略をめぐらせる帝一。
学生=少年たちによるかなり知的で大胆な政治的駆け引きというのも本作のおもしろさで読みどころだが、それでもやっぱり「しょせんは生徒会長でしょ?」「そもそも生徒会長がそこまですごいものである世界観って何!?」と思う人も多いはず。しかし、そこが本作の魅力だ。

本誌の掲載誌は「ジャンプスクエア」だが、本作はまさに「ジャンプマンガ」。かつて本宮ひろ志や宮下あきら、車田正美が番長文脈でやってきたことを、学ランの匂いは残しつつ、学内政治のケンカと友情ものとして描いているのが、『帝一の國』だといえる。
ある種、番長ものや、はたまた古きよき美少年学園もののパロディとも取れるのだけれど、確実に「友情、努力、勝利」ありだ。
なんだかよくわからない勢いと熱さ、それゆえの笑いもあって、でもつまるところ感動的!

最新10巻では、現在2年生の帝一が、1年たちから不人気であることを知って登校拒否になるも、友人たちの励ましと、久我という心強い味方を傘下に得たことで復活。
続いて学内でも人気の高い夢島を仲間に引き入れるため、ある作戦に出るが……。

さまざまに個性的な男子キャラクターとその派閥が次々と出てきて、そのキャラクターの魅力でも見せてくれる。そこもまた、少年目線でも女子目線でも楽しめる「ジャンプマンガ」ならでは。
思いきり笑いつつ、かつ熱く燃えたいという人は、ぜひ『帝一の國』に参戦だ。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。

単行本情報

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