『夫の遺言』
マキヒロチ(著)弁護士ドットコム(監) 集英社
(2014年12月9日発売)
マキヒロチのマンガは「働く女性」のイメージが強いが、この主人公はちょっと違う。
結婚して1年半、31歳にして年上の夫・貴志に先立たれた絹代は、ほとんど働いたこともなく、その意欲もない女性なのだ。
悲しみのどん底で開封された、亡き夫の「遺言書」は、彼女と出会う前に書かれたもので、そこに絹代の名前はなかった。その席では、前妻とその子どもたちだけでなく、知らなかった愛人や隠し子にも囲まれ、(絹代にとっては)もうさんざん!
「男の人がいないと生きていけない」と自殺を考える絹代だが、逆境をバネに成長してゆく過程が、1冊読み切りで、気持ちよくまとめられている。
単行本の帯文は「その遺言は私の人生を変えた。」だ。
でも、よく変わるとは限らない。遺言書はしっかり書くべし、「終活」を怠っちゃあいかんとばかりに、監修の弁護士ドットコムによる「就活コラム」もエピソード間に挟まれ、たいへん勉強にもなるマンガだ。
最終ページには「自分や大切な人が亡くなった時のためのチェックリスト」まで載っており、準備万全でありますっ!
(相手がいれば……うっ)
<文・かとうちあき>
人生をより低迷させる旅コミ誌『野宿野郎』の編集長(仮)。野宿が好きです。だらだらしながらマンガを読むのも好きです。