『そこをなんとか』第1巻
麻生みこと 白泉社 \552+税
一般の人にとっては、法律や裁判なんて、なかなか身近には感じられないもの。
ましてや何か困ったことがあったとしても、費用や面倒を考えると、弁護士に相談することすら躊躇してしまうという人が大半なのでは?
しかし、日本司法支援センターによって、弁護士や裁判費用の支払いが困難な人のため、公的に援助を行う法律扶助事業も行われている。
1月24日は、その“法律扶助の日”。同センターが1952年のこの日に設立されたことから(設立時の名称は法律扶助協会)、同会が1993年に制定したもので、全国で無料法律相談会なども開かれている。
そんな日に読むのにもってこいなのが、麻生みことが描く女性新米弁護士の奮戦記『そこをなんとか』だ。
ヒロインの改世楽子(かいせらくこ)は、社会派の正義漢……ではなく、儲かるからと弁護士を目指した、ちゃっかりした女性。新たな司法制度のおかげで試験に受かったものの、同時に合格者も急増してしまったため、弁護士は就職難という事態に!
しかしたくましい楽子は、キャバクラでのバイト時代、飲み比べで負かしていた菅原の弁護士事務所に押しかけ、無理やり採用を勝ちとってしまう。ただ、現実の弁護士の仕事と法曹界は、憧れとはかなり違っていて……。
のんきでいい加減なところもある楽子ながら、貧乏出身ということで弱者に肩入れする人情深いところもある。少なくとも偉ぶったところはなくて、弁護士なのに等身大の女性。金持ちになりたいはずが、結果としては依頼者に力を尽くして損ばかりしてしまう。
そんな楽子のキャラクターと、弁護士の仕事、裁判の仕組みが知れるところが本作のおもしろさだ。
どうせ相談をするなら、楽子のような弁護士がいいと読んだ人なら思うはず!
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。