このマンガがすごい!WEB

一覧へ戻る

2月8日は黒部トンネルが貫通した日 『黒部秘境物語』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/02/08


KUROBEhikyouMONOGATARI_s

『黒部秘境物語 破砕帯をぬけ』
弓一人 集英社 \280+税


1959年の2月8日は、北アルプス直下に関西電力の黒部トンネルが貫通した日。
黒部トンネルとは、黒部川第四ダムと黒四発電所間を結ぶ「黒部ルート」の総称で、その全長は10193メートルにおよぶ。

黒部ダムは富山県の黒部川水系黒部川に建設された、日本最大級のダムである。
この水力を利用した発電所建設にあたり、建設資材を運ぶためのトンネルが必要となった。黒部ルートのなかでも世紀の大工事といわれたのが「大町トンネル(現在の呼称は「関電トンネル」)」。

その、命がけの激闘を描いたのが本作『黒部秘境物語 破砕帯をぬけ』である。
なにしろ、山を掘削してトンネルを作るのがいかにたいへんかは素人でも想像がつくが、堅い岩肌を掘り進んでいくのはまだ楽な作業だった。
高度成長期、最新鋭の掘削機などを使い、当初は順調に進んでいたが、彼らの前に立ちはだかったのが「破砕帯」である。

黒部渓谷にはさまざまな地質、岩質がまじり、その間には地下水がたまっている。こうした複雑な地層のなかで、もろく崩れやすい層や地下水が吹きだしてくる層があり……これが破砕帯と呼ばれるものなのである。
地層を刺激しないようトンネルを慎重に掘り進める男たち。上からは冷たい水が滝のように降り注ぎ、足下や岩の間からは噴水のように水が噴き出す。鉄砲水のような大量の水に襲われれば命はない!

土木工事のプロたちが経験と技術を駆使して破砕帯に挑んだ熱き男たちの記録は、1964年から新聞連載された木本正次の小説『黒部の太陽』につづられる。
さらに1968年には、これを原作とした映画『黒部の太陽』が、三船敏郎・石原裕次郎の主演で公開され、大きな話題となっている。

本作もこの小説を原作としているが、1983年に「週刊少年ジャンプ」で連載されたことはとても印象深い。
『Dr.スランプ』『キャッツアイ』『ストップ!!ひばりくん』『ハイスクール奇面組』『キャプテン翼』『キン肉マン』などと並び、どう見ても異彩を放っていた本作だが、短いながらも強烈なインパクトを残した忘れがたい作品である。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」

単行本情報

  • 『黒部秘境物語 破砕帯をぬけ』 Amazonで購入

関連するオススメ記事!

アクセスランキング

3月の「このマンガがすごい!」WEBランキング