『マンガ古典文学 古事記』<壱>
里中満智子 小学館 \1,600+税
2月11日は建国記念の日である。紀元前660年に初代天皇の神武天皇が即位した日に由来しており、1873(明治6)年に制定された「紀元節」がもととなっている。
神武天皇の事跡は『古事記』と『日本書紀』に記されている。今回は『古事記』をマンガ化した里中満智子『マンガ古典文学 古事記〈壱〉』を紹介したい。
『古事記(ふることふみ)』は、上巻(かみつまき)・中巻(なかつまき)・下巻(しもつまき)に分かれており、内容的には上巻「神代の物語」、中巻「神と天皇の物語」、下巻「天皇の物語」となっている。
このうち神倭伊波礼毘古(カムヤマトイワレビコ)、すなわち神武天皇についての記述は中巻に記されている。
里中満智子が描いた『古事記』では、神武天皇の東征や即位までを<壱>の中に収めているので、天地開闢(てんちかいびゃく)から初代天皇までの物語がわかりやすくなっている。
神武天皇が何を行ったのかが簡潔に記されているので、日本の創世神話を再確認するには最適の一冊といえる。
また、天照大御神が天の石屋戸に籠もった逸話、須佐之男(スサノオ)による八俣大蛇退治、稲羽の白兎、大国主神の国譲りなど、どこかで見聞きしたような有名なエピソードが続々と登場するので、興味は尽きない。
天神(あまつがみ)でありながら、なぜ天皇の祖先は人間と同じように寿命を迎えるようになったのか? 『古事記』がどう解釈してきたのかも興味を引くところだろう。
なお、神武天皇の事跡は、安彦良和『神武』でも題材となっている。こちらも建国記念の日にはうってつけの作品だ。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
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