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『あとかたの街』第3巻 おざわゆき 【日刊マンガガイド】

2015/04/10


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『あとかたの街』第3巻
おざわゆき 講談社 \580+税
(2015年3月13日発売)


名古屋に暮らす一少女の目から太平洋戦争を語る本作は、巻が進むごとにすごみを増す。
主人公のあいが12歳の視点で戦争というものに、なんの罪もない人々の上に焼夷弾を降らせる外国人に抱く「なぜ?」の一つひとつが、胸に迫ってしかたがない。
そして、12歳にして命の危険に見舞われる友人や肉親を「守りたい」と思う強い感情も。

物語は、いよいよ終戦が近づく昭和20年へ。お正月くらいは敵も襲ってこないだろうという楽観は、無慈悲にも打ち砕かれる。1月3日には97機のB29が襲来、空襲警報の回数は日増しに増えていく。
さらには前年の東南海地震に続き、マグニチュード6.8の三河地震が発生。そんななかで、建物疎開を命じられ、長年慈しんだ家を壊さなければならない憂き目にあう一般市民も……。

空襲警報に脅かされ、落ちついて眠ることもできない毎日。
食料がない、衣料もない。窮乏の一途をたどる市民生活のなか、生きのびるためにできるのは希望を失わないことだけ。
しかし、こうした状況下で希望を失わずにいるのがどれだけ難しいことか、噛みしめながら読みたいと思う。また、それを一瞬たりとも忘れさせない説得力こそ、本作の力である。

次巻では昭和20年3月19日の名古屋大空襲が描かれる模様。3月10日の東京大空襲に比べ、一般にあまり知られていない本件を知るうえでも意義深い。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」

単行本情報

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