『くまみこ』第4巻
吉本ますめ KADOKAWA \552+税
(2015年5月23日発売)
「この世間知らずがすごい! 2015」1位、間違いなし。
ど田舎も田舎、なんにもない東北の田舎のはずれ、熊出村。山岳信仰がさかんな地域。
神社では山の神である熊を祀っており、アイヌの流れを組んだ巫女がいる……。んだけど、クマのナツはいつも笑顔でフレンドリー。人間語をしゃべる賢いクマ。
巫女のまちは14歳。炊飯器でお米も炊けない、超弩級の世間知らずだ。
まちの世間知らずは半端ではない。
ナツが「じどうかいさつ何を使うととおれる?」(ふりがなつき)と質問。「1・Suica 2・りんご 3・バナナ」と三択になっていても、まちにはさっぱりわからない。
普段はナツに甘えてだらけており、彼女があまり勉強している様子はない。
また極度の対人恐怖症で、村の人以外への警戒心が強すぎる。
そんな彼女が、なんと4巻で、携帯電話を手に入れる。
大事件である!(電波いっさい入らないけど)
4巻は、まちとナツの暮らす熊出村に、とある事件の解決のためよそから刑事がやってくるという、これまでとは少し違った展開になっている。
たしかにその事件の行方も気になるが、あのまちが! 携帯電話を! 手に入れたことのほうが! 大事件なのだ!
携帯電話に夢中なまちは、ナツに抱きあげられて電波が入らないか楽しんでいたところ、思わず携帯電話を落としてしまい、電池カバーが外れるという大惨事が起きてしまう……!
「人間的なものと、人間的ではないもの」の共存を描くことに長けている作者。
絵本的な世界観を、時代がずれたような村民やまちの会話、「生活にはたいていオチはない」というストーリーテリング、そして少女まちの「ザ・世間知らず」の3つを組み合わせることで、見事にコメディ化している。
世間知らずのまちは14歳。クマのナツとの関係はまるで親子のようだ。
しかし著者は、越えられぬ種族の壁もきっちり描いている。2人の関係がどうあろうと、2人は親子ではない。
幸せあふれるこの世界。数年後どうだろう。彼女は都会の学校に行き、ナツは残されるのだろうか。
2人がいつもいっしょにいる。そんな当たり前のことが幸せな、この瞬間が愛しい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」